天野屋

本葛。天然のクズの根と水のみを使った全国でも珍しい逸品

2022/2/22 10:00

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天野屋の本葛


くず切りやくず餅など、和菓子の原料として知られる「葛(くず)」。寒い時季にはくず湯で体を温める、という人もいるだろう。

垂水市二川にある「天野屋」では、毎年12月になると「本葛」の製造が始まる。ジャガイモなどのでんぷんを混ぜたものが「くず粉」として出回る中、天然のクズの根と水のみを使った本葛は全国でも珍しい逸品だ。

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滝の水や地下水を使い、ろ過を繰り返す


夏の間、つるを伸ばし葉を広げ、陽光をたっぷり浴びたクズは、根に良質なでんぷんを蓄える。葉が枯れた冬、養分が詰まった根を掘り出すのは「掘り子」と呼ばれる職人たちだ。希少価値が高い天然のクズの在りかを、彼らは決して明かさない。

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掘り子から持ち込まれたクズ根



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梶ヶ山隆世さんとクズ根。見た目はまるで木の幹のよう


一度に運び込まれる量は、軽トラック1台分ほど。中には人の背丈ほど大きいものもある。細かく裁断し、搾り機にかけ、何度もこす。抽出したでんぷんを専用部屋で乾燥させ、ようやく完成する。

仕上がりまで約1カ月半、とれる量はクズ根のわずか5%と手間がかかる作業だ。創業者の故・梶ケ山秀敏さんが機械の設計から手掛け、試行錯誤して確立した製造法を、息子の隆世さんら家族が引き継ぐ。

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約30年前、創業時に故・秀敏さんが手づくりした機械を、現在は隆世さんが使う


葛根湯などの漢方薬に使われ、健康維持に役立つともいわれる。100gあたり2,160円と安くはないが、全国から注文が入るのはそのためだ。

国道220号沿いの天野屋店舗と電話・FAX注文で購入できる。シーズンごとに持ち込まれたクズで製造し、売り切れたら販売を終了する。

お勧めはくず湯でとる方法。カップに本葛を大さじ1杯入れ、同量の水かぬるま湯で溶く。沸とうしたての熱湯を注ぎ、よくかき混ぜると出来上がりだ。

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天野屋の本葛


「茶色っぽくトロッとするのが本物の証し」とのこと。お湯の温度や量が少し違うだけで白くなったり、とろみが出なかったりと、なかなか難しい。天然の塩や黒糖、ハチミツなどで軽く味を付けてもおいしい。

本葛は100・300・500g、1kgを販売。購入の際は事前に連絡を。

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垂水市二川669

営/9:00~18:00

※情報は記事公開日現在のものです。

※料金など、店舗にてご確認ください。


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