鹿児島弁語る「AIせごどん」や共通語翻訳ソフト…方言伝承へ若者が新たな発想

2023/11/22 20:30
「AIせごどん」が来場者を出迎えた鹿児島方言週間フェスティバル=12日、鹿児島市のかごしま県民交流センター
「AIせごどん」が来場者を出迎えた鹿児島方言週間フェスティバル=12日、鹿児島市のかごしま県民交流センター
 古里の言葉を滅びさせたくない-。方言を話す若者や子どもたちが減る中、鹿児島県内では危機感を持つ団体や研究者が、次代につなぐ取り組みを続ける。活動の輪は、若手にも広がりつつある。

 「方言を、わっぜぇ好きになってくいやんせな」。12日、鹿児島市のかごしま県民交流センターであった方言イベント。西郷隆盛の肖像画が鹿児島弁を語る「AIせごどん」が来場者を出迎えた。

 製作したのは鹿児島大の坂井美日准教授(日本語学)の研究室。学生たちはほかにもAIを使って鹿児島弁と共通語の翻訳ソフトを開発し、ゲームやクイズ形式の教材作りも進める。災害医療現場や学校、観光地などでの活用も模索する。

 東京育ちで工学部1年の小出龍之介さん(19)は、市電のアナウンスに鹿児島弁の導入を提案する。「独特のイントネーションと語彙(ごい)が大好き。観光資源にもなる」



 研究を後押しするのが、イベントを主催した鹿児島方言文化協会。鹿児島弁検定やネット辞典づくりなどに取り組んできた。種子田幸廣会長(73)は「各家庭で教わる機会が失われた今、若い人へ伝えていくのが重要」と力を込める。

 立ち上げた劇団「げたんは」は、学校や保育園へ出向き、鹿児島弁の劇を披露する。イベントの劇に出演した春山小学校5年の別府佳奈さんは、分からない鹿児島弁を祖父母らに聞き返すようになったという。



 継承ムードが高まるのが奄美群島だ。国連教育科学文化機関(ユネスコ)が2009年、奄美語(奄美大島、喜界島、徳之島)と国頭語(与論島、沖永良部島、沖縄本島北部)の消滅危機を「危険」と認定したことが背景にある。

 10年から沖永良部の方言「島ムニ」を研究する国立国語研究所の横山晶子特任助教(37)は、40代の島民が聞き取りはできることに注目し、島ムニの絵本を5冊作った。子どもへ読み聞かせをしてもらうのが狙いだ。「20代の話者が生まれたら、あと60年は言葉の命が続く。自主的に学ぶ手伝いをしていきたい」

 横山さんとの出会いを機に伝承活動に取り組む幼稚園補助教諭田中美保子さん(64)は、紙芝居や劇などさまざまな遊びに島ムニを取り入れる。「園児にとっては、島ムニも英語も新しい言葉。すぐに覚えるが忘れるのも早い。古里の大切な文化を未来に残すために長く続けていきたい」と話した。
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