南日本新聞、宮崎日日新聞、熊本日日新聞、西日本新聞の九州4紙による「九州弁」についてのアンケートでは、鹿児島の方言を話す人の回答が1300人を超え、多様な意見やエピソードが寄せられた。鹿児島の個性、誇りや親しみを感じる、継承が課題、あまり好きではない-。ふるさとの言葉への思いを探った。
「方言で鹿児島出身同士と分かると、すぐうち解ける」「お年寄りとの会話に役立つ」「けんかしていると勘違いされた」。鹿児島弁を使った際のエピソードからは、さまざまなシーンが浮かんだ。
指宿市の会社員女性(59)は「同郷の人がすぐ分かり都会でもコミュニケーションのキッカケになる」とする。東日本大震災で、こんな経験をした人も。「帰宅難民となり東京駅から川崎へ歩いて帰る時、駅で知り合った方とおしゃべりしていたら、近くを歩いていた方が鹿児島の言葉は懐かしいと近づいて来られて、一緒に歩きましょうと元気づけられた」(鹿児島市・パート、70歳女性)。
鹿児島弁は海外でも交流のきっかけになった。垂水市のパート男性(64)は「パリの雑貨屋で方言を使っていたら、店の人に『鹿児島の方?』と話しかけられ、同郷と分かると自宅に招待された」と明かす。
方言が仕事に役立つという声も多かった。鹿児島市の看護師女性(27)は「仕事をしていく上で年配の方と接することも多く、鹿児島弁が分かっていないと会話が成り立たないことも多い」という。その上で「幼少の頃から方言に触れていないと難しいと思う。授業の一環として取り組めたらいいのに」。
同市の公務員男性(37)は「鹿児島弁でしゃべると強く印象に残るので、県外の仕事相手に披露すると覚えてもらいやすい」と記した。
一方、独特のイントネーションや言い回しは、勘違いを生むようだ。同市のパート女性(53)は「県外の寮で同郷の人と話していたら、外国人のケンカかと思われた」。指宿市の会社員男性(63)も「外国の人に間違われる」と明かす。
方言についての考えはさまざま。奄美市の男性(49)は「自分たちしか分からない言葉は連帯感を高めるかもしれないが、分からない人は逆に疎外感を感じると思う」との意見を寄せた。
【鹿児島弁巡るエピソード】
・高齢者とコミュニケーションがとれるから仕事柄うれしい(鹿児島市・看護師、45歳女性)
・同郷の人がすぐ分かり都会でもコミュニケーションのキッカケになる。私も含めて、昔の美しい鹿児島弁が使える人が少なくなってきているのが残念でもったいない(指宿市・会社員、59歳女性)
・外国人と思われる(鹿児島市・自営業、54歳男性)
・若い頃、名古屋の居酒屋で話していたら、見ず知らずの人に「九州ね。懐かしい」と言われ、ビールをおごってもらった(薩摩川内市・会社員、62歳男性)
・自分たちしか分からない言葉は連帯感を高めるかもしれないが、分からない人は逆に疎外感を受けると思う(奄美市・49歳男性)
・仕事柄、高齢者の方と接するので助かる。残したい遺産だと思う(鹿児島市・看護師、49歳男性)
・標準語で何と言えば良いか分からない気持ちを方言なら伝えられる(姶良市・無職、76歳男性)
・仕事をしていく上で年配の方と接することも多く、鹿児島弁が分かっていないと会話が成り立たないことも多く感じる。幼少の頃から方言に触れていないと難しいと思うので、授業の一環として取り組めたらいいのにと思う(鹿児島市・看護師、27歳女性)
・微妙な気持ちが伝わりやすい(鹿児島市・パート、61歳女性)
・学生時代(約40年前)友人との会話で方言使ったら軽蔑するような目でみられ、嫌な思いをしたことある。この時代は標準語を使うように言われていたのだろう(錦江町・主婦、59歳)
・東日本大震災のとき、帰宅難民となり東京駅から川崎へ歩いて帰る時、駅で知り合った方とおしゃべりしていたら、近くを歩いていた方が鹿児島の言葉は懐かしいと近づいて来られて、一緒に歩きましょうと元気づけられた(鹿児島市・パート、70歳女性)
・ニューヨークで鹿児島弁を話している人と会って世界は狭いと思った(曽於市・会社員、43歳男性)
・関西でからまれたとき、鹿児島弁で文句を言ったら、相手が勝手に外国人と勘違いしけんかにならずホッとした。荒々しい言い回しもあるが、相手を敬う言葉があるのでいい方言(さつま町・無職、67歳男性)
・県外に進学した時の自己紹介で、鹿児島弁が印象的だったのか、温かく受け入れてもらえた(鹿児島市・会社員、48歳女性)
・方言は場が和む。大阪で就活していた時に、面接でクスクス笑われたこともあるが、面接官の社長から「大阪弁を使うな、と言われたら何も話せないけどね」と言われた(鹿児島市・会社員、44歳女性)
・県外で私の語りを聞いて、あなたは鹿児島の人ですね、私も鹿児島ですよと話しかけられて、うれしかった(日置市・ケアワーカー、67歳男性)
・方言でしか表現できない感情があるし、この方言でないと関係が近くなれないと感じることが多い(鹿児島市・パート、53歳女性)
・懐かしかったり、温かい気持ちになったり、タイムスリップできる(出水市・元教育関係、70歳女性)
・関東在住時、電車内で不愉快な乗客の悪口を言っても、同郷人以外には話の内容を知られずにすんだ(指宿市・パート、66歳男性)
・県外の寮で同郷の人と話していたら、外国人のケンカかと思われた(鹿児島市・パート、53歳女性)
・久しぶりに会った友人でも、方言を使えば一瞬で昔ながらの関係に戻れる(鹿児島市・団体職員、67歳男性)
・パリの雑貨屋で方言を使っていたら、お店の人に「鹿児島の方?」と話しかけられ、同郷と分かると自宅に招待された(垂水市・パート、64歳男性)
・関西在住時、子どもが入院した病院で、親子の会話を聞いた看護師に「田舎の方ですか」と聞かれ、バカにされたような気分になった(鹿児島市・パート、48歳女性)
・標準語では表せない微妙なニュアンスが表現できていい(姶良市・パート、45歳女性)
・鹿児島弁でしゃべると強く印象に残るので、県外の仕事相手に披露すると覚えてもらいやすい(鹿児島市・公務員、37歳男性)
・会社の会議が東京であり、全国から集まった200人以上の前で最初から最後まで鹿児島弁で発表したところ、顔と名前を覚えてもらえた(鹿児島市・会社員、58歳女性)
・仲間のつながりが深まる気がする。同級生と田舎の言葉で話すと昔がよみがえる(南九州市・会社員、66歳男性)
・イントネーションがかわいいと言われた(鹿児島市・教員、52歳女性)
・鹿児島弁を使ったことで、ふざけていると思われた(鹿児島市・パート、60歳女性)
・高齢者が多い職場で方言ばかり使っていたら、販売業に転職しても鹿児島弁がなかなか抜けなかった(鹿児島市・パート、42歳女性)
他県からの転勤者が「ですです」と使うようになると、やった!と思う(鹿屋市・パート、44歳女性)
・正月休暇後、久しぶりの職場で先輩に「○○の書類ある?」と聞かれ、無意識に「あっど」と答えてしまった。一瞬、間があり大爆笑。すぐに広まり、ニヤニヤからかわれた。恥ずかしくも楽しい思い出(南さつま市・パート、61歳女性)