「ワンコインでの提供を続けるため、あらゆる企業努力をしている」工夫と話す落和正さん鹿児島市鴨池新町のかずひろ亭
新型コロナ禍の苦境をしのぎ、ようやく客足が戻ってきた飲食店や総菜店が、今度は物価高にあえいでいる。それでも「支えてくれる客のために」との思いで工夫を重ね、価格維持に挑む店は少なくない。
35年以上、500円ランチを提供する鹿児島市鴨池新町の「かずひろ亭」。唐揚げやチキン南蛮など揚げ物が人気だ。だが、食用油の値段はすでにコロナ前の倍。業者から米の値上げを求める案内が何度も届く。店主の落和正さん(67)は「泣きたいよ」とこぼす。
「周囲が値上げをするんだったら、あえて現状維持を維持する」。そう決意している。だから、店休日は見切り品の野菜、肉を求めてスーパーや物産館、道の駅を複数巡る。家庭菜園を趣味にする姉からは野菜を提供してもらう。
「業者任せでなく、自分で動かないと乗り切れない」と落さん。「ワンコインはサラリーマンの味方」と感謝する常連客の期待に応え続けるためにも、限界に挑戦するつもりだ。
同市西陵4丁目の「惣菜のさち」も約30年前のオープン以来、弁当・丼物メニューのほぼ全てをワンコイン以内で提供する。食材に加え、容器類も値上がりし「正直、利益はほぼない」と漏らす。
それでも、親の代から続く「低価格でボリュームたっぷり」という“売り”を死守するため、配達以外の業務は1人でこなし、閉店後や休日に何店舗も回って安い食材を入手する。身を削る日々だが、客からの「おいしかった」の声を励みに踏ん張る。
一方、同市山下町で弁当・総菜を販売する就労継続支援事業所「キッチンみらいず」は昨年、10%前後の値上げに踏み切った。ただ「単価は上がっても客数が減り、物価上昇分を補いきれていない」と、運営するNPO法人ともいきの山下俊介理事長(47)は話す。
障害がある人に就労機会を提供するためにも、採算度外視というわけにはいかない。事業所の利益が通所者の工賃にそのまま反映されるからだ。客足が遠のいた分を別の手段で確保しようと、最近は会議やイベントの弁当受注に力を入れる。「通所者が生き生きとした生活を送れるよう、できる限りの努力をしたい」