九州における物価高の影響を探るため、南日本新聞、宮崎日日新聞、熊本日日新聞、西日本新聞の九州4紙は合同でアンケートを実施した。ほぼ全員が物価高の影響を「感じる」と回答した。実質賃金が伸び悩む中、あらゆるモノやサービスの値上がりが続いており「我慢も限界」と悲鳴も。「老後のための貯蓄に回せない」と将来への不安を訴える声も相次いだ。
アンケートは、本紙「こちら373」など各紙の無料通信アプリLINE(ライン)登録者らを対象に6月中旬に実施。1748人が答え、鹿児島県内在住者は279人だった。
県内在住者で物価高の影響を「非常に感じる」は79.2%。「ある程度感じる」の19.0%と合わせると98.2%に上った。世帯収入が「600万円以上1000万円未満」と比較的高収入の層でも傾向は変わらず、多くの家庭で家計を直撃している現状がうかがえた。
特に値上がりを感じるモノやサービス(複数回答)については、生鮮食品68.5%、加工食品34.4%など、日々の暮らしに不可欠な食品の割合が高かった。また「車社会の地方では削るのが困難」との声が多いガソリンも43.4%に上った。
一方、支出を削っている項目(複数回答)で、割合が最も高かったのは外食53.0%。食料品41.9%、衣料品33.7%が続いた。旅行やレジャーを我慢する人も目立つ。
自由記述では「物価上がれど給料は上がらず、景気のいい話は都市部と大企業ばかり」(鹿児島市、57歳女性)など賃上げが広がらないことを問題視する意見が多い一方、「小規模自営業者は賃金を上げろと言われても原資がない」(出水市、54歳男性)と打ち明ける声もあった。
また年金生活者からは「毎月赤字で切り崩してきた貯金もなくなった」(いちき串木野市、76歳男性)、「生活が厳しい。働きたくても年齢的に断られる」(鹿児島市、67歳男性)など切実な訴えがあった。
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アンケートは多様な方々の声を聞くのが目的で、無作為抽出で民意を把握する世論調査とは異なります。
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大きい地方の負担感
物価上昇に詳しい第一生命経済研究所の熊野英生首席エコノミストの話 終わらない物価上昇に市民の不満は蓄積している。九州など地方では購入先の選択肢が少なく“逃げられない物価上昇”の状態。生活への負担感はさらに大きくなっている。