人吉市の人吉旅館では2023年以降、韓国人を中心に外国人宿泊客が増えている。

　火付け役は2000年から女将［おかみ］を務める韓国出身の堀尾里美さん（67）。当時、韓国でブームだったゴルフに着目。旅館から車で30分圏内にゴルフ場が3コースある地の利を生かそうと韓国の旅行会社と提携。ゴルフツアー客の受け入れを始め、年間2500～3千人ほど受け入れるようになった。

　コロナ禍後の23、24年度には約4500人に伸びた。韓国語での案内や車での送迎など、きめ細かな〝おもてなし〟が口コミで広まり、宿泊者の半数近くを占めるようになったという。

　堀尾さんによると、韓国人客の9割がゴルフ目的。「残り1割は観光やサイクリング、登山など。韓国は美容や健康ブームで、豊かな自然を楽しむのもトレンドのようです」と話す。

　人吉球磨ゆかりのアニメ「夏目友人帳」も、外国人の誘客をじわりと後押しする。熊本県が21年に動画投稿サイト「ユーチューブ」で公開したアニメとのコラボ動画には、同旅館の客室や外観が登場。館内にはアニメグッズを集めたコーナーを設けた。アニメファンは中国人が目立つという。

　5月中旬、中国・北京から友人と2人で訪れたイラストレーターの女性（26）が、1泊2日の旅行を楽しんでいた。「旅館では、夏目友人帳の雰囲気を味わえます。リラックスできる景色に心が落ち着きました」とほほ笑んだ。