鹿児島県知事選は6月25日告示される。7人が立候補に向けて準備を進めており、戦後最多の争いとなりそうだ。前哨戦の動きを追った。

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現職逆風 組織戦に影
2020/06/23 15:14
自民党県連定期大会であいさつする三反園訓氏(奥)=6月20日、鹿児島市
自民党県連定期大会であいさつする三反園訓氏(奥)=6月20日、鹿児島市
 「うわさやデマが飛ぶことは心外。(今回の知事選では)自民が自信と確信を持って推薦した候補への尽力をお願いする」。鹿児島市で20日にあった自民党県連定期大会。野村哲郎選挙対策委員長の退任あいさつに、複雑な表情を見せる関係者も見られた。
 党が推薦する現職三反園訓氏(62)の後援会事務所開きを巡り、あるうわさが流れていたからだ。
 新型コロナウイルス感染拡大による緊急事態宣言中の5月、知事は県境をまたぐ移動の自粛を呼び掛けながら、東京から森山裕県連会長と野村氏を招いたことが波紋を呼んだ。三反園氏が「議員自らの判断で来た」と釈明したのに対し、「野村氏は知事の責任転嫁だと怒って、辞めたのでは」といった見方が広まった。
 野村氏は取材に「定期大会で話した通り」とうわさを改めて否定。森山氏も「そういう見方をしない方がいい」とけん制するものの、首をかしげる党員は少なくない。
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 自民は前回、4選を目指す現職を公認並みに支援したが、「真・県民党」を掲げ野党に後押しされた三反園氏に敗れた。「連敗はできない」と語る森山氏。定期大会当日は、同じ建物内の別会場に自身の選挙区関係者を集め、ハッパを掛けた。
 5月中旬には、県連幹事長と県議団会長が連名で、自民各県議に支持者の連絡先提出を求める「異例」の文書を送った。三反園氏自身に直接電話をかけさせる目的。「1日200件かけることもあるようだ」と関係者は明かす。
 告示前から力の入った組織戦は焦りの裏返しともとれる。三反園氏を取り巻く顔触れはこの4年間で一変。就任後の原発対応などで、草の根運動を支えた支援者は離れ、選対幹部の姿も今の陣営にはほぼない。代わりに自民党県連や友好団体の関係者が名を連ねる中、自民県議の一人は「前回の対立候補を推すには抵抗感があるのは事実だ」。
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 「県民の声を一つ一つ大事にし、県民に寄り添い、県民のための政治をやるために走り続ける」。三反園氏は定期大会で、知事選への思いをこう語った。
 約7分のあいさつのうち、6分弱は車座対話の実績や県の予算配分についてだった。出席した鹿児島市議は「県政の将来像を聞けるかと期待したのに、なぜ推薦団体にも話さないのか」と疑問を呈す。
 新型コロナウイルス対策で「公務多忙」(三反園氏陣営)とはいえ、メディアなどが企画した討論会も欠席を続ける。「肝心の本人が表に出てこない」との不満も聞こえる。
 21日には、三反園氏が複数首長に電話し、県事業を持ち出し集票を求めた疑いも明らかになった。ある自民県議は「推薦した党の見識が問われる問題。支持者からの突き上げも厳しい」と危機感をあらわにする。

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