記者会見で繁華街の現状を説明する桐生舞さん=6月22日、県庁
鹿児島市の天文館で、ナイトクラブのホステスを勤める桐生舞さん(28)=源氏名=は、新型コロナウイルスの感染が拡大した4月以降、県庁で4回記者会見に臨んだ。「1日休めばその分給料が減る」「先が見えずに不安」。静かな口調で窮状を訴え続ける。
不平不満は言わず、自分の力で乗り越える-。子どものころからの信念は変わらない。だが、4歳の娘と暮らすシングルマザーの身に、新型コロナの影響は大きすぎた。4月から5月にかけ仕事は40日間休みになった。客が激減し、収入が途絶えていく恐怖が今もある。
「確定申告をしていないため、収入減の証明ができずに100万円の持続化給付金が得られないホステスが大勢いる。政治に助けを求めたことはなかったけど、借金に追われ、生活に困窮している現場の声を上げていかなければ、実情は分かってもらえない」
夜の繁華街存続のために設立した「水商売を守る会かごしま」のホステス代表を務める。「お客さまは簡単に戻らない。来ても安心という情報発信を店側だけでなく行政もしてほしい」と切望する。
小学2年の時、親が離婚した。高3で母をがんで亡くした。母が入院中は2歳上の兄と2人だけで暮らした。
大学に入学した10年前、天文館で働き始めた。年間授業料約140万円を自力で稼ぐためだ。4年で大学を卒業。一定の収入が得られ、自ら道を切り開けるこの世界に魅力を感じ、卒業後も天文館に身を置き、「接客のプロ」として仕事に誇りを持つ。守る会の活動に参加したのも「青春をささげた愛着ある天文館のため」だ。
飲食店の休業や廃業が増え、4歳の娘を夜間預けていた託児所は今も再開していない。新たな託児所は見つからず、勤務中は知人や前夫に預けている。「環境の変化に娘もストレスを感じている」と心配する。
知事選で投票したことはなく、「縁遠い世界」だったが今は違う。コロナを経験してさまざまな社会問題を身近に感じるようになった。繁華街のことをしっかり考えてくれる人に一票を託そうと考えている。
テレビの情報番組を見ていて政治家にも違いがあると痛感した。好印象だったのは大阪府の吉村洋文知事。言葉に言い訳めいた逃げがなく、実現したいという情熱を感じた。
「言ったことはやる、できないことは言わない」。リーダーに求めるのは有言実行だ。