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離島患者搬送

丁寧さを欠く県の体制
2020/06/30 10:43
離島からのコロナ患者の搬送について「現場任せでなく、県が具体的に方針を示すべきだ」と訴える公立種子島病院の徳永正朝院長=南種子町の同院
離島からのコロナ患者の搬送について「現場任せでなく、県が具体的に方針を示すべきだ」と訴える公立種子島病院の徳永正朝院長=南種子町の同院
 「鹿児島県が示した重症患者発生時の島外への搬送体制は“絵に描いた餅”なのではないか」。種子島南部圏の中核病院、公立種子島病院(南種子町)の徳永正朝院長(56)は今も疑問を抱えたままだ。
 新型コロナウイルスの県内初の患者が判明した3月26日から間もなく、県は医療関係者に患者発生時の対応などをまとめた「発生時の体制」を報告した。離島で重症患者が発生した際の搬送は「自衛隊または海上保安庁のヘリに依頼する」との一文があるだけだ。
 「(重症患者が)発生した時は一刻を争う。すみやかに搬送してもらえるか心配だった」。徳永院長の懸念は的中する。
 同院に4月中旬、救急患者が搬送された。意識障害とけいれんを伴い、肺炎を発症していることが判明した。県外の人との接触もあったため、徳永院長はコロナ感染を強く疑った。だが、島内でPCR検査ができる施設はない。重症者に必要な人工心肺装置「ECMO(エクモ)」を使用する可能性が高いと判断し、午後2時ごろ県に自衛隊ヘリの派遣を要請した。
 だが、ヘリが到着したのは、通常の急患搬送にかかる時間の約2倍にあたる5時間後。しかも、自衛隊ヘリではなく「県の防災ヘリ」だった。
 県消防保安課によると、自衛隊ヘリの搬送対象はPCR検査でコロナ感染が確定した患者のみで、今回の「感染疑い例」は県の防災ヘリで搬送するケースに当たる。時間を要したのは、防災ヘリや搭乗者にコロナ感染対策を施す必要があったためという。
 運ばれた人のPCR検査の結果は陰性だった。だが、徳永院長は「コロナ患者の発生が即、医療崩壊につながる可能性が高い離島において、今回のケースは『結果オーライ』では済まされない」と語気を強める。
 県が示した「発生時の体制」は、感染疑い例については触れておらず、丁寧さを欠く内容だと指摘する。
 求められるのは、離島~本土の具体的かつすみやかな連携体制の構築だ。徳永院長は「現体制は現場への想像力が欠如している。現場の声を聞いて、さまざまなケースを想定して早急に作り直してほしい」と要望。「離島の医療にも思いを巡らせてくれる人が県政のトップに立ってくれたら」と期待した。

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