7月12日投開票の県知事選が始まった。コロナ下で県民は政治に何を望んでいるのか。声を聞いた。

バスガイド

変わるきっかけの一票
2020/07/07 10:25
コロナ禍が収束し、客との交流ができる日を待ち望む宝来紗希さん=鹿児島市の南国交通観光
コロナ禍が収束し、客との交流ができる日を待ち望む宝来紗希さん=鹿児島市の南国交通観光
 新型コロナウイルスの影響は、予想以上だった。落ち込んだ観光需要を喚起しようと鹿児島県が実施する「ディスカバー鹿児島キャンペーン」の宿泊助成は人気だが、対象は宿泊施設とタクシー(第1弾のみ)だけだ。「一言で観光業といっても仕事はさまざま。『観光バス』にも目を向けてほしい」と、南国交通観光(鹿児島市)でバスガイドをする宝来紗希さん(24)は訴える。
 例年、観光シーズンの春と秋は県内外の客でにぎわい、休みは月に4~5日程度と多忙を極める。しかし今年は1月下旬からキャンセルが出始め、乗務予定の中止が相次いだ。3月は、県内日帰りツアーの1件だけ。それ以来、自宅待機と週に約2回の会社での待機を繰り返し、合服で客を迎えることがないまま、夏服へ移行した。
 「観光地の情報は日々更新されるため、ガイドの勉強に終わりはない」。大変なことはあるものの、客の「ありがとう。良かったよ」という言葉がやりがいで、一番の励みだという。鹿児島弁を聞きたいという県外客には、車内のマイクで“おはら節”などを披露。客も合いの手で参加し、車内が一体となって盛り上がる。「歌は得意ではないけれど」と照れるが、「入社1年目の研修後も、地域に合わせていろいろな曲を練習した」と話す姿からは仕事への誇りが感じられる。県観光連盟から、令和2年度の優良従業員にも選ばれた。
 観光バスに客足が戻るのは、まずは個人旅行が当然のようにできるようになってからではと予想する。自身も早く乗務したいという気持ちの一方、他県の運転手が感染したことを知ったときは「自分も感染するかもしれないと、とても不安だった」と打ち明ける。
 “新しい生活様式”での旅に向け、感染予防のフェースガードや、マイクカバーの着用を会社に提案した。「気をつけないといけないことは増えても、お客さまに観光を楽しんでもらうという目標は変わらない」と、自分にできることを模索する。
 選挙には毎回参加してきた。以前は「誰が当選しても同じ」と思っていたが、社会人になり、働き始めてから考えが変わった。「自分の支持する候補者が当選しても、すぐに何かが変わるわけではないかもしれない。でも、変わるきっかけを作るためにも投票に行くのは大事」。
 県のリーダーには、有言実行を求める。候補者7人という状況は「誰が何を訴えているのか分かりにくい」としつつも、「どうにかしてほしいというのが本音。鹿児島の経済を立て直してほしい」と1票に願いを込める。

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