7月12日投開票の県知事選が始まった。コロナ下で県民は政治に何を望んでいるのか。声を聞いた。

バイト失った大学生

生活苦に目を向けて
2020/07/10 09:24
1000円で3日分の食料を買い込む鹿児島大学生=7月1日、鹿児島市与次郎1丁目
1000円で3日分の食料を買い込む鹿児島大学生=7月1日、鹿児島市与次郎1丁目
 新型コロナウイルス感染拡大に伴い、鹿児島大学3年の男子学生(20)=鹿児島市=は、アルバイト先の居酒屋が休業し、月6万円の収入を失った。今も店は再開のめどが立っていない。4万円近かった食費を1万5000円に切り詰める。「月3万円の支援があれば、生活は全然違う。目線を低くして、必要な人には、しっかり支援してもらえないものか」と漏らす。
 レジ袋が有料化された7月1日、男子学生はマイバッグを片手に、市内のスーパーマーケットに向かった。3割引きのハム、92円の冷やし中華、ゴボウなど7品で計1091円。「いつもより買い込んだ」。きんぴらごぼうにして日持ちさせて食いつなぐ。
 3食全て自炊するため、3日に一度、買い物に出掛ける。大学進学後も同居していた親に頼み込み、家賃2万7000円のアパートで1人暮らしを始めて10カ月。最寄りのスーパーより1円でも安い食料品を求め、10分近くかけて自転車で通うのが習慣となった。
 生活費は自分で稼ぐ。1年以上前から天文館の居酒屋で、週4日間勤務していた。書店のバイトと掛け持ちで、体育会系の部活動に汗を流す日々は生活に張りがあった。コロナ禍で一変した。
 「コロナウイルスの影響でアルバイト先が休業するなどして生活に困っている学生へ」。5月中旬、大学から電子メールが送られてきた。すぐに申請し月末には5万円が振り込まれた。
 「本当に助かった。現金の給付がなかったら、と思うとぞっとする」。胸をなで下ろす一方、時間がたつにつれ、疑問が湧いた。「学生の金銭支援は本来、大学ではなく自治体の仕事のはず」
 政治への関心はあまりないが、少しでも暮らしが良くなればと思い、県知事選挙では票を投じるつもりだ。困窮する学生に寄り添ってくれそうな候補者を見極めている。
 久しぶりに郡元キャンパスを歩くと、構内は閑散としていた。講義の大半はオンラインで実施するため家にいる学生が多いからだ。立て看板には「遠隔授業で家庭の負担が増えている。授業料減免を」「大学を辞める人が増えないよう、学生を支援して」など悲痛な声が紹介されていた。
 卒業後は就職するつもりだった。コロナの影響で、企業が採用を控える場合には大学院進学を考えるようになった。男子学生は言う。「自分はまだましな方。本当は苦しいのに、言い出しづらい人もいる。トップは細かい所にも目を向け、支援が行き届くようにしてほしい」

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