鹿児島県の三反園訓知事の任期満了まで1カ月余りとなった。前回知事選で掲げたマニフェスト(政策綱領)はどこまで達成できたのか。各分野の識者とともに点検する。

(1)観光

2020/06/17 15:16
 「世界から人が集まる鹿児島、観光で日本一に」。三反園訓知事がマニフェストの1番目に掲げたのが観光振興だ。就任した2016年以降、国際線や格安航空会社の新規就航、NHK大河ドラマ「西郷どん」の放映効果などで、県内観光客は順調に推移した。18年は県内延べ宿泊者数が11年以降最多の886万4320人に増えた。
 19年は一転、減少する。日韓関係の悪化に伴うソウル線の減便、「西郷どん」の反動減、台風や大雨被害が響いた。さらに今年は新型コロナウイルス感染拡大で業界全体が打撃を受けている。
 「観光は波及効果が大きい半面、感染症や国際情勢の悪化など、何か起こればあっという間に落ちてしまう。だからこそ、外的な要因に左右されない持続可能な観光地づくりが求められている」。県観光プロデューサーを9年間務め、FLY&STAYツーリズムかごしま(鹿児島市)を主宰する奈良迫英光氏(69)は指摘する。「18年の『西郷どん』後の対策が弱く、外国人向けのキャッシュレス対応やガイド養成も十分でなかった。伸び悩んだままコロナ禍に見舞われてしまった」
 誘客の起爆剤にと、マニフェストにはアウトレットモールやテーマパークを誘致する計画が盛り込まれていた。
 ただ、それらに関する具体的な事業はこの4年間なし。県が昨年発表したマニフェストの進捗(しんちょく)状況には「既存施設の情報収集、整理・分析、検討の実施」との文言が並ぶのみだ。奈良迫氏は「まるでバブル期のような発想。やらないのなら、それをしっかり説明するのも大切だ」と語る。
 ウオーターフロント整備のうち、鹿児島市のマリンポートかごしまでは世界最大の22万トン級クルーズ船が接岸できる新岸壁工事が進む。19年は鹿児島港本港区北ふ頭と合わせ106回の寄港があったが、今年上半期はコロナでキャンセルが57回に上った。
 本港区エリアの再開発もコロナ禍で民間事業者の公募が延期されている。奈良迫氏は「しばらくは国内客の奪い合いになる。県庁内も部局の壁を超え、柔軟でタイムリーな情報発信や施策を考える必要がある。それをマネジメントするのが知事の役割だ」と強調した。

日間ランキング >