鹿児島県の三反園訓知事の任期満了まで1カ月余りとなった。前回知事選で掲げたマニフェスト(政策綱領)はどこまで達成できたのか。各分野の識者とともに点検する。

(2)農林水産業

精力的に食材売り込む
2020/06/18 15:18
 「トップセールスで鹿児島の『食』をPRし、販路拡大に努めます」。マニフェストで農林水産業分野の先頭に記した言葉通り、三反園訓知事は精力的に動き回った。
 トップセールスは県の集計が終わっている2019年7月時点で184回。表敬訪問を含めた数字とはいえ、訪問先はアジア、欧州、ブラジル、ロシアなど海外にも及ぶ。台湾では、牛肉輸出が17年に解禁されるのを見据え、現地の食品輸入・卸大手4業者と会談した。解禁初年度は鹿児島からの輸出量が全国の半数を占め、その後も4割前後で推移。「トップシェアの道筋をつくった」と畜産課は自負する。
 17年の農業産出額は初めて5000億円を突破し、11年ぶりに北海道に次ぐ全国2位となった。18年度農林水産物輸出も過去最高の227億円となった。好調な数字が並ぶものの、上級農業経営アドバイザーの増原伸一氏(53)=鹿児島市=は「産出額が大台に乗っても、生産者の手元にお金が残らない、では話にならない」と語る。
 例えば18年農業産出額は17年に続き全国2位をキープした一方、農業所得は4位、農業所得率(売上高に対する所得の比率)は29.3%で最下位だ。鹿児島の場合、高く売れるがコストもかかる畜産の割合が他県より高い事情はある。増原氏は「所得の伸び悩みは、輸送費がかさむことと価格決定権のない生産者が多いことが原因」と分析する。
 所得を増やすには「生産コストを下げ、高く売るための中長期的な戦略が必要」と指摘する。食材をまとめて運べば輸送費は下がる。そのためには仲介ができる地域商社的な組織や人材の育成が待たれる。情報通信技術(ICT)を活用したスマート農業は人件費を削減できる。価格変動に左右されない売り方の工夫も望まれる。
 「『頑張る人に寄り添いました』だけじゃだめ。選択と集中が大事。生産者が将来の展望を持てるような施策が欠かせない」と話す。

日間ランキング >