鹿児島県の三反園訓知事の任期満了まで1カ月余りとなった。前回知事選で掲げたマニフェスト(政策綱領)はどこまで達成できたのか。各分野の識者とともに点検する。

(3)防災

原発の停止、点検は実現
2020/06/19 15:19
 三反園訓知事は前回知事選で、反原発団体の平良行雄氏(現共産県議)と政策合意を交わして自らに候補を一本化し、「反原発」を掲げて当選した。合意文書には「原発を廃炉にする方向で(中略)取り組んでいく」などと書かれた。
 就任直後から九州電力に川内原発(薩摩川内市)の運転停止と地震の影響を調べる特別点検を2度要請した。マニフェストに掲げた「川内原発を停止して施設点検を行う」を実現させた。
 「避難計画の見直し」では、複合災害時の対応を加えるなど県地域防災計画を4回見直した。県は「より具体化・充実化を図った」と説明する。「原子力問題検討委員会を県庁内に恒久的に設置」も、これまで11回会合を開いた県原子力安全・避難計画等防災専門委員会が該当するとしている。
 項目だけを見ると達成しているようでもある。ただ地質学や防災が専門の井村隆介鹿児島大学准教授(56)は「票を投じた原発反対派が『裏切られた』と思うのは仕方ないのでは」と振り返る。
 選挙期間中は「原発のない社会を」と訴えていたのに、立ち上げた専門委は「原発を止める止めないではなく、推進の結論ありきで話し合っている。委員も行政や九電に都合のいい学者ばかり」と指摘する。「反対派ではなくても、せめて中立な立場の人を入れるべきだった」
 河川の寄り州除去は2020年度も前年度比44%増の16億円を計上し、4期連続で増額している。堆積した土砂をショベルカーで除去し、氾濫を未然に防ぐ効果があるとされる。車座対話などで地元からの要望も多い。
 災害を未然に防ぐ対策を充実させたマニフェストとなっているものの、「国の施策と大きく変わらず評価不能」と井村准教授。「高齢化が進む中山間地域の要援護者対策をどうするか。特殊な対応が必要となる離島に特化した取り組みはないのか」。鹿児島県の現状に即した対応を求める。

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