三反園訓知事がマニフェスト(政策綱領)で目玉として掲げた政策の一つが「子ども医療費の窓口負担完全ゼロ」といえる。
助成は市町村が実施主体で、対象年齢や金額は異なる。県内では自己負担分をいったん全額払い、後から戻ってくる仕組みで、この一時払いをゼロにし、子育て世帯の負担軽減につなげる狙いだ。
ただ、18年10月に始まった窓口無料化の対象は住民税非課税世帯の未就学児だけで、未就学児全体の15%にとどまる。19年9月には非課税世帯の小中高校生にも広げる意向を表明したが、20年度予算には新たな対象者への給付費用は盛り込まれず、21年4月以降に開始を先送りした。
三反園知事は折に触れ「厳しい財源状況の中で、体力に応じ一歩ずつ上っていく」と説明する。しかし社会保障法が専門の鹿児島大学の伊藤周平教授(60)は「明らかな公約違反。当選したからには真っ先に取り組むべきだった」と言い切る。
保育士や介護職員確保のため「県独自の処遇改善と人材育成に取り組む」とする項目にも首をかしげる。
国の処遇改善制度や加算を活用できるよう、保育・介護施設側への研修や社会保険労務士など専門家の派遣に取り組んでいるとはいえ、県独自の加算に関しては「今のところ試算していない」(くらし保健福祉部)という。「文言から給料を県独自でアップさせるという意味で捉えている県民が多いのではないか。期待外れだろう」と伊藤教授。
新型コロナウイルスの感染拡大で、離島や過疎地の医療体制や救急搬送態勢の一層の強化も求められている。4月には和泊町でコロナ感染者を確認。本来なら入院先となる感染症指定医療機関が島になく、県は搬送時の感染リスクを避けるため、結核病床のある医療機関に入院させた。
伊藤教授は「流行の第2波に備えるためにも、高度急性期や急性期の病床を減らす方向性を示した地域医療構想の見直しが必要」と指摘。「根拠に基づく目標値を立て、達成の検証がしっかりなされなければ、マニフェストは単なるポーズになりかねない」と話した。