鹿児島県の三反園訓知事の任期満了まで1カ月余りとなった。前回知事選で掲げたマニフェスト(政策綱領)はどこまで達成できたのか。各分野の識者とともに点検する。

(5)産業・雇用

指宿道無料化の壁高く
2020/06/21 16:22
 指宿スカイラインの無料化は、三反園訓知事のマニフェスト(政策綱領)の中でも県民受けする施策といえる。ただ、実現までの道のりは前途多難だ。
 無料化への“一歩”として、2019年10月から谷山-頴娃インターチェンジ(IC)間の通行料金を全車種・全区間一律100円に引き下げた。普通車で最大530円の値下げとなった一方、料金収入の95%以上を占める鹿児島-山田IC間は消費税増税分を反映して10~20円値上げした。
 谷山-頴娃間は28億円をかけたのり面対策を進めており、鹿児島-山田間の収益を充てている。山田ICのフルインター化やETC設置なども合わせると事業費は80億円に上り、土木部は県議会6月定例会で「必要な工事が終わっていない」とし、無料化の早期実現は厳しいとの見方を示した。
 九州経済研究所経済調査部の福留一郎部長(54)は「無料化の目的は何か、実現したら物流や観光にどんな効果をもたらすのか、十分な検証が不可欠」と話す。「4年間でできなかったのなら『ここが見込み違いだった』と理由を説明してほしい。分かりやすい情報発信が、県政への信頼につながる」と強調する。
 「研究機関や関連産業の企業誘致」は、この4年で医療機器関連や精密加工を含む3社を誘致した。県の起業支援は17年度120件、18年度102件、19年度が116件と「起業年間100件を目指す」との目標もクリアした。「企業の経営状況や、どれだけ雇用を生んだのかといったフォローアップを充実させ、支援した成果にも踏み込んでほしい」と福留部長。
 太陽光や風力、バイオマスをはじめ再生可能エネルギーの促進も掲げる。15年度時点の県内の年間電力消費量に対する再生エネの発電量は推計で3割に満たず、これを22年度までに5割以上に高める方針を県は示している。実現には一層の促進策が求められそうだ。
 新型コロナウイルスの感染拡大に伴う産業構造の激変にも備えなければならない。福留部長は力を込める。「県だけの力ではこの苦境は乗り越えられない。民間と危機感を共有し、官民一体で知恵を絞るためにも、行政の透明性が何より大切だ」。

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