鹿児島県知事選は6月25日の告示まで1週間となった。自民・公明は前回対立した現職の推薦を決め、野党は反現職を前面に打ち出す。4年前とは支援候補が入れ替わるねじれの構図。8人が立候補の意向を表明する中、従来の組織票が割れる可能性もあり、「票読みは難しい」との声が聞こえる。
自公は前回、4期目を狙った伊藤祐一郎氏(72)を支援したが、8万票以上の差で敗れた。友好団体を中心とした組織型選挙の限界をうかがわせた。今回、現職で2期目を目指す三反園訓氏(62)を推す自民県議は「県議団の中でも活動に温度差はある。ただ、前回の反省を生かし、下部組織への浸透に力を入れる。組織力で勝ち抜く」と話す。
公明は、自民の推薦決定から約2カ月後の6月11日に現職推薦を決めた。県本部は「県職員との関係性を不安視する意見もあり、調整に時間を要した」と説明する。
現職を推薦する団体も一枚岩とはいえない。構成員約3万8000人を擁する県農民政治連盟。幹部の1人は「地方では反現職の声もある」と明かす。県建設業協会の幹部も「前回対立した三反園氏を応援することに抵抗感を覚える業者は少なくない」。県医師連盟は池田琢哉委員長が三反園氏陣営の後援会長を務める。とはいえ、選挙事情に詳しい医療関係者は「知事選を冷めた目で見る人も多い。医師連盟票は当てにならない」と語った。
一方、野党4党は候補者選定に時間がかかり、「共闘して特定の人を推すのは難しい」と結論付けた。立憲民主、国民民主は支持母体の連合鹿児島と歩調を合わせ、新人の塩田康一氏(54)と伊藤氏に支援候補を絞り、2人の一本化協議をぎりぎりまで見守る方針。社民は自主投票になる見通し。
脱原発を掲げた三反園氏の初当選を後押しした、15万ともいわれる反原発票も分裂の様相を見せる。原発の即廃炉を求める有志が新人の横山富美子氏(73)を擁立。共産も推薦を決める中、「脱原発は1期4年では難しい。長い目で見るべきだ」と現職を擁護する声もある。
今回は既成の政党や団体から距離を置く立候補予定者が複数名乗りを上げた。若者や女性を含む浮動票の動向も見通せない。現職が2期目を目指した知事選は過去7回あり、ほぼ共産系候補との一騎打ちだった。「2期目は信任投票の色合いが濃いのに、今の知事への信頼がないから乱戦になる」。自民県議の1人はこう指摘した。
【知事選立候補予定者】
三反園訓氏(62)=現職
有川博幸氏(61)=新人、元鹿児島大特任助教
塩田康一氏(54)=新人、前九州経済産業局長
伊藤祐一郎氏(72)=元職
八木一正氏(70)=新人、岩手大名誉教授
横山富美子氏(73)=新人、医師
青木隆子氏(57)=新人、元民放アナウンサー
武田信弘氏(66)=新人、元高校教諭