支持者と握手する横山富美子氏=7月8日、鹿児島市谷山中央5丁目
戦後最多の7人が争う鹿児島県知事選は、投開票まで3日となった。今回初めて女性2人が立候補し、各地で支持を呼び掛けている。これまで知事選の女性候補は2008年の1人だけ。新人の青木隆子氏(57)は「女性が積極的に声を上げられる社会を目指す」、同じく新人の横山富美子氏(73)は「性別に関わらず、政策の中身や信念をしっかり伝えたい」と話す。
「生活者の視点で、女性の感性で新しい鹿児島をつくりたい」。元民放アナウンサーの青木氏は8日朝、鹿児島市役所前で約30分マイクを握った。
県内の有権者は男性より女性の方が9万人以上多い。「県政には女性らしいきめ細かさがもっと必要」と考えたことが立候補のきっかけだった。かかりつけ助産師制度の確立やオンライン授業の推進など、マニフェスト(政策綱領)には子育て世代を意識した施策が並ぶ。
後ろ盾となる組織もなく、女性グループや環境団体のメンバーが個人的に手伝う草の根の選挙。運動中は特に30~50代の女性から「頑張って」と声を掛けられるという。「政治に関心を持っていても、関わりづらかったという人もいるのではないか」と語った。
医師の横山氏は「選挙と仕事は別」と、診療を続けながら演説会や街宣で政策を訴えている。8日も、霧島市の自身の病院で診察を終えて鹿児島市へ移動。午後から鹿児島生協病院前で「平和を守り、原発を直ちに止めるためにできることは全てやる。次の世代、次の次の世代にも心を寄せて」と演説した。
原発ゼロと憲法9条の実現を掲げ、「誰の後押しがなくても、1人で選挙管理委員会に向かうつもりだった」と強い信念で立候補に至った。診察で選挙活動ができない時は、思いを知る反原発・護憲団体の有志らが補う。女性候補という気負いはないとしつつ「子育てや主婦経験があり、女性の立場は男性より分かる」。女性がゆとりを持って育児と仕事を両立できる環境整備にも取り組む考えだ。
世界経済フォーラム(WEF)は昨年末、世界各国の各分野に占める女性の比率を公表した。日本は153カ国中121位と低い水準で、特に政治分野の遅れが指摘されている。
鹿児島大学の杉原薫准教授(女子教育史)は「男女比率を事前に割り当てる『クオータ制』がない日本では、女性の立候補は大きな一歩。政治的なリーダーに就く女性が増えれば、意思決定の場で活躍する女性として他分野のモデルにもなる」と期待を寄せる。