新型コロナウイルス対策の補正予算を発表する県財政課=5月15日、鹿児島県庁
185億1400万円。鹿児島県が新型コロナウイルス対策で組んだ一般会計予算の補正総額だ。補正編成は2019、20年度合わせて計7回を数える。このうち、176億7500円は国庫支出金で賄われた。
医療体制の強化や経済対策、生活支援と多岐にわたる事業は、国の施策を県に当てはめ、予算化したケースが多い。県議からは「独自財源を使い、より手厚い支援をすべきだ」との声が上がるものの、県は「まずは国の施策をしっかり進める」との考え方を示す。
思い切った上積みができない背景には財政難がある。収入(一般財源)に対し、義務的経費(人件費、公債費、扶助費など)が占める割合は98.2%(18年度決算値)。九州で最も高く、自由に使えるお金は収入の1.8%にすぎない。
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財政立て直しは長年の懸案だ。1990年代のバブル崩壊後の景気対策で、公共事業を増やしたつけが色濃く残る。借金に当たる県債の残高は、2020年度末の見込みで1兆526億円(県独自分)。県民1人当たり63万9000円の借金を背負っている計算になる。
1993年の8・6水害後、復旧事業などで起債が相次いだことも響いた。財政規模が似ている隣県の熊本に比べ、県債残高の総額は2000億円程度多い。その分、毎年の返済額(公債費)がかさみ、財政の硬直化を招く。
近年は新規の県債発行が抑えられ、残高は減少が続く。現県政も4年間で約750億円圧縮したと強調するが、財政再建の道筋がついたとは言い難い。日銀の金融緩和策で利子支払額が減るといった外的要因に助けられた側面もあるからだ。
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3年前、当初予算編成を前に歳出削減・歳入確保策を検討しようと、知事肝いりの「行財政改革推進プロジェクトチーム」ができた。ここで明らかになったのは数十億円規模に上る財源不足だった。
予算編成では、目的の事業を終えた基金の活用や、税収が少ない自治体に認められる「減収補てん債」の発行と、毎年あの手この手で不足分の穴埋めが続く。通常なら年度末に計上して翌年度の財源に充てる減収補てん債を、当初段階で組み入れて先食いすることには「禁じ手」との批判も少なくない。こうした財政運営の在り方に、三反園訓知事は「基金250億円確保、財源不足ゼロ、県債残高を減らす」と、単年度の目標を示すにとどまる。
県は2011年度末に財政健全化の指針となる「行財政運営戦略」を策定し、県債残高の削減目標を掲げた。17年度に達成して以降、“次”の指標を定めていない。元県職員で宮崎公立大学の有馬晋作学長=行政学=は「中・長期的な視点を持って再建目標や計画を立てなければ、行政運営は行き詰まる」と指摘する。