6月25日告示された鹿児島県知事選は戦後最多の7人が立候補し、現職、元職、新人がそれぞれ目指す県政の姿を訴えている。7月12日の投票に向け、県政の課題を考える。

(2)県都再開発

コロナ後の計画不透明
2020/06/30 10:10
手前右の駐車場が県庁東側県有地。道路を挟んだ左側が県が取得を目指す民有地=6月29日、鹿児島県庁
手前右の駐車場が県庁東側県有地。道路を挟んだ左側が県が取得を目指す民有地=6月29日、鹿児島県庁
 4月8日、鹿児島県は新総合体育館の候補先とする県庁東側県有地(鹿児島市与次郎2丁目)の隣接地の所有者・南日本放送と土地譲渡協議に入った。
 新型コロナウイルス感染拡大で政府が緊急事態宣言を発令した翌日だった。収束が見通せない中での協議入りに、県議会6月定例会では議員から厳しい意見も飛んだ。
 企画部の藤本徳昭部長は「基本構想の策定や実施設計まで数年かかり、進められることを進めたい」と説明する。協議は「入り口の段階」とし、購入のほか、借地や県有地との交換など譲渡方法を探っているという。

■ □ ■

 築60年を迎える県体育館(同市下荒田4丁目)の代わりとなる新総合体育館整備を巡っては、候補地が二転三転し迷走が続く。2018年6月、三反園訓知事は鹿児島中央駅西口の県工業試験場跡地を「最適地」と表明。しかし経済界から渋滞や敷地の狭さなどに異論が相次ぎ、19年9月、西口案を撤回した。
 それからわずか2カ月、県有地2カ所のうち、前知事時代に基本構想を策定した経緯がある県庁東側を選ぶと、今度は議会や関係者から選定の公平性に批判が噴出。その後のウェブ限定の県民アンケートでは、民有地を取得する方針に否定的な意見も寄せられたが、再検討はされないまま。県議会も3月定例会で譲渡協議入りを容認した。
 「県民アンケートとは何だったのか」。回答した鹿児島市の自営業男性(70)は憤る。「情報公開も説明も不十分。コロナで世の中は大きく変わる。軌道修正も必要では」

■ □ ■

 県都再開発の目玉である鹿児島港本港区エリアにも、新型コロナが影を落とす。
 にぎわいを提供してきた商業施設ドルフィンポートが3月末で営業終了し、既に建物は解体された。県はまず、跡地と隣接するウオーターフロントパークの計約5.3ヘクタールの観光拠点化に向け、3月下旬に再開発を手掛ける民間事業者の公募を始める予定だった。
 ただコロナの影響で開始時期を2カ月延期。5月になって「事業者が提案内容を検討できる状況にない」と無期限延期となった。
 高級ホテル誘致をはじめ計画の前提となる訪日観光客需要はコロナ禍で激減しており、22年5月を見込んでいた事業着手の遅れは避けられない状況だ。
 県観光プロデューサーの伊牟田均氏は「人の流れが止まり、世界中のホテルや飲食業界が痛手を負っている。県が想定する事業者公募ができるのかは不透明だ」と指摘する。
 都市計画が専門の鹿児島大学工学部の小山雄資准教授は「県民にとってどんな開発が望ましいのか。県は鹿児島市と十分連携し、都市の長期的なビジョンを描くべきだ」と強調した。

日間ランキング >