6月25日告示された鹿児島県知事選は戦後最多の7人が立候補し、現職、元職、新人がそれぞれ目指す県政の姿を訴えている。7月12日の投票に向け、県政の課題を考える。

(6)子育て支援

地域差ない保育環境を
2020/07/05 09:21
園児の減少が続く保育園=6月下旬、肝付町
園児の減少が続く保育園=6月下旬、肝付町
 鹿屋市高須町の高須保育園では、園児67人のうち園周辺から通うのはわずか4人。市中心部に設けた分園から送迎バスを運行することで園児を確保している。バスの維持費や燃料費のほとんどを園負担で賄っている。
 目の前の高須小学校は3月に閉校。永友良一園長は「ますます子育て世代が住みにくい地域になった。保護者の受け皿であり続けたいが経営は苦しい。救済策があれば」と訴える。
 県の2019年の出生数は1万1977人。1960年の3分の1にまで落ち込んだ。合計特殊出生率は60年に2.66だったものの、19年には1.63(全国1.36)となった。
 肝付町の円通寺保育園では本年度、園児数が昨年度と比べ8人減り28人となった。減少に歯止めがかからず危機感を募らせる。同町岸良地区では唯一の保育園が12年に閉園。送迎バスで山道を約30分かけ別地区に通う園児も。少子化が過疎地の保育園、利用者双方に影を落とす。
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 少子化に悩む保育園がある一方、鹿児島市の一部などでは待機児童が発生。保育士不足が深刻となっている。
 同市谷山地区のすみれ保育園は定員120人だが、保育士不足で19年度は100人しか預かれなかった。青木和彦園長は「求人を出しても応募がないこともある」と嘆く。長女(5)を預けるパート玉城麻衣子さん(32)は次女(3)も一緒にしたかったが、順番待ちが多く別の園に通わす。「送迎も行事も2倍となり負担」と漏らす。
 19年度に県内の保育士養成校を卒業して資格を取得した484人のうち、県内の保育施設に就職したのは66%。残りは県外や保育以外の仕事に就いた。一方、県内の保育士の平均年収は約332万円(18年度)で全職種平均の約395万円を下回る。賃金格差も保育士不足の背景にあるとみられる。
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 保育士不足をどう解決するか。県は国の施策を活用し昨年度、県内の保育施設で働けば返還が免除される修学資金貸付制度を始めた。4月には保育士の人材バンクを開設し、潜在保育士の掘り起こしを狙う。ただ効果は未知数だ。離島を抱える鹿児島にとって、一律の制度だけでは機能しない可能性もある。
 伊仙町の幸徳保育園園長で県保育連合会の幸多健次会長は「島より待遇のいい地域に保育士が流れる」と懸念。保育士の待遇改善の条件である研修は多くが鹿児島市内であり、受けに行くための移動や宿泊費は園負担のため「離島向けの財政支援や奨学金を」と要望する。
 県は「かごしま子ども未来プラン2020」で「県内のどこにおいても子どもを産み育てやすい環境づくり」を掲げる。過疎、少子化、保育士不足、離島のハンディ…。多様な課題がある中、地域差をなくすようなきめ細かな子育て支援をいかに実現させるかが問われている。

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