社説

[下鶴氏が再選]市政への関心喚起して

2025年11月26日 付

 鹿児島市長選挙で現職の下鶴隆央氏が再選を果たした。
 県内最年少市長として1期務めた現職と、共産党が推薦する新人の争いだった。県都の一大プロジェクトとして県民が注目するサッカースタジアム構想などは大きな対立軸とならず、投票率は27.21%と過去3番目の低さにとどまった。
 有権者の7割が棄権した結果について下鶴氏は謙虚に受け止め、市政への関心を高める努力を怠ってはなるまい。誰が市長になっても同じ、といった無関心が広がらないよう、市民と問題意識を共有した対話の行政を進めてほしい。
 下鶴氏は1期目の実績として、待機児童ゼロ実現をアピールした。人口減少時代にも「選ばれるまち」を作ると訴え、デジタル化による稼ぐ力向上などを訴えた。
 4回目の挑戦だった桂田美智子氏は生活に密着した福祉の充実を訴えた。立候補表明は告示の2週間前と出遅れ、無投票は避けられたが、盛り上がりを欠く構図となった。
 前回選挙は、市役所出身の市長が9期36年続いていたところ、県議を辞した下鶴氏が4新人による激戦を勝ち抜いた。県議時代から政党の後ろ盾なしに草の根で活動する無所属だった点が、「変化」への期待を集めた。しかし今回、出陣式では自民党の森山裕幹事長や連合鹿児島の会長が応援演説した。有権者にとって結局従来の与野党相乗りに映ったのは否めない。
 下鶴氏は集会や個人演説会より、選挙カーで市全域を巡ることに注力した。低投票率が予想された中、適切な判断だっただろうか。市政のビジョンをじっくり語れば、トップとして評価を受け、選挙戦や市政全般への注目を高める機会となったに違いない。
 サッカースタジアム構想は、今年2月までに候補地4カ所を断念し迷走が続く。下鶴氏は県や民間と連携した「オール鹿児島」での整備に意気込みを見せる一方、選挙公報には「スポーツを中心としたエンターテインメントの促進」と触れただけ。桂田氏は「スタジアム建設は民間主導に」と明確に転換を打ち出していた。
 下鶴市政1期目で目に付いたのは、候補地を巡る県との連携不足や場当たり的な対応だ。調整能力を疑問視する声は少なくなかった。2期目の信任を得たが、有権者は漠然とした構想への裁量まで託したわけではないだろう。
 持続可能なまちづくりへ、市議会のチェック機能はますます問われる。人口減で税収が限られる中、下鶴氏は子育て支援を重視する。新年度予定する中学生までの医療費負担ゼロ一つをとっても、財源捻出が課題となっている。優先課題の一方、他の施策にどんな影響が出るのか目を凝らしてほしい。

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