アゼルバイジャンで開かれていた国連気候変動枠組み条約第29回締約国会議(COP29)が閉幕した。
地球規模の温暖化対策に国際社会がどう取り組むかの方向性を決める重要な会議である。発展途上国の対策のため、先進国は2035年までに官民合わせて少なくとも年3000億ドル(約46兆4000億円)を支援するとの目標で合意した。
会期が2日も延長されたのは、支援内容を巡って先進国と途上国が対立したからだ。決裂を回避できたのはよかったが、途上国が納得したとは到底言えず、今後に大きな課題を残した。
18~19世紀の産業革命以降、特に先進国は大量の温室効果ガスを排出してきた。その責任に見合う拠出を途上国が求めるのは当然であり、今回、年1兆3000億ドル(約200兆円)規模の資金を要求していた。
途上国は再生可能エネルギーの導入など温暖化対策のほか、既に生じた異常気象に伴う災害復旧などに多額の資金を必要とする。債務の増大を避けるため、無償供与が大半を占めることを望んでいた。
だが、先進国側が当初示した資金は貸し付けや投資を含む年2500億ドルで、要求から懸け離れていた。気候変動に起因すると思われる自然災害や海水面上昇などの深刻な影響を受けている低所得国もある。2500億ドルを3000億ドルに上積みする案が終盤に示されても、小島しょ国などの反発が収まらなかったのは理解できる。
現行目標は年1000億ドルであり、先進国は3000億ドルへの引き上げが精いっぱいとの立場だった。閉幕日、アゼルバイジャンのババエフ議長が異議申し立ての確認時間も取らず採択の宣言に踏み切ったのは、何としても物別れを避けたかったからだろう。
ボリビア代表が「先進国が資金と実施手段を提供する義務を果たさないという不公平を強化するものだ」と非難するなど、途上国の憤りが会場に渦巻く幕切れとなったのは残念だ。来年ブラジルである第30回締約国会議に向けて各国が危機感を共有し、排出削減目標を一層深掘りできるかが課題だ。
温暖化対策の法的枠組みとして15年に採択されたパリ協定は、産業革命前からの気温上昇を1.5度以内に抑えることを目指している。米次期大統領のトランプ氏は「気候変動はうそだ」と主張しており、パリ協定から離脱する見込みだ。気候変動対策が勢いを失う可能性は否定できない。
世界第5位の大排出国である日本の責任はさらに重くなる。今回の会議では、参加国間の前向きの譲歩を促すような流れを主導することはできなかった。国内対策強化とともに、米中という2大排出国への働き掛けを強めて存在感を示したい。