社説

[水道PFAS]検査継続し不安払拭を

2025年12月15日 付

 発がん性が懸念される有機フッ素化合物(PFAS=ピーファス)を巡り、環境省と国土交通省は水道水の全国調査結果を公表した。2024年度に検査した1745水道事業の2割に当たる332事業でPFASが検出された。鹿児島県内では38事業中、長島町と東串良町の2事業で検出された。
 給水人口5000人超の上水道と5000人以下の簡易水道などを対象にした初の大規模調査だ。国が20年度に設けた暫定目標値を超える例はなかったが、富山を除く46都道府県の飲み水に含まれている現状は軽視できない。
 水質は水源の周辺環境の影響を受けて変化する。一度の検査で未検出でも将来にわたって安全とは限らず、継続的な監視をしなければ国民の不安は払拭できまい。国にはすべての事業者に検査を義務づける法的仕組みづくりが求められる。
 PFASは分解されにくく「永遠の化学物質」と呼ばれる。過去に製造・使用した工場や含有する泡消火剤を使った在日米軍、自衛隊基地の周辺環境で検出が相次ぐ。体内からの排せつに時間を要し、発がん性やコレステロール値上昇などとの関連が疑われる。
 20~23年度は全国14の事業で暫定目標値を超過したが、水源切り替えなどの対策でいずれも改善した。環境省は「給水人口の98.2%で暫定目標値以下が確認された」とアピールする。
 とはいえ、20年度以降、一度も検査をしていない事業者が一定数ある。県内も17事業で実績がなかった。
 事業者が検査をしない理由は「周辺環境から考えてPFASが含まれる可能性が低い」が最多で、「費用が負担になる」「水道法上の測定義務がない」が続いた。法的義務がないため検査に二の足を踏む様子がうかがえる。国は引き続き検査を呼び掛ける構えだ。
 水道法上の水質基準の対象にPFASを格上げすることなども検討されている。石破茂首相は開会中の臨時国会で「来春をめどに方向性を取りまとめる」との方針を示した。
 基準値の検討も急務だ。暫定目標値はPFASの代表物質PFOAとPFOSの合計で1リットル当たり50ナノグラム(ナノは10億分の1)。基準値を2物質それぞれ4ナノグラムに引き下げた米国などに比べると緩い。24年度の検査では愛知、長崎、北海道の3事業で暫定目標値に近い47~49ナノグラムが検出されている。
 PFASの健康影響は未解明の部分も多い。それでも飲用水の異変を早期につかみ、すぐ公表することが肝要である。被害を未然に防ぐ「予防原則」の考え方を徹底しなければならない。
 過去に浄水場で高濃度が確認された岡山県吉備中央町は公費による血液検査に乗り出した。水質改善や排出源特定も自治体の負担となる。国は必要な助言と支援を積極的に行うべきだ。

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