社説

[政活費「全廃」へ]改革進める論戦さらに

2025年12月19日 付

 使途公開の不要な政策活動費(政活費)を全廃する政治資金規正法再改正案を含む政治改革関連3法案が、衆院本会議で可決された。参院の審議に移り、今臨時国会で成立の見通しだ。
 規正法は、自民党旧安倍派の派閥裏金事件に端を発した「政治とカネ」問題を受けて6月に改正されたばかり。だが改革への踏み込みは中途半端で衆院選の与党大敗を招いた。その民意が再改正を実現させたと言えるだろう。
 自民は最終的に、立憲民主党などがまとめた案を受け入れた。独自法案は「抜け穴」を指摘され、石破茂首相が目指す年内決着に向けて譲歩せざるを得なかった。一定の前進だが、企業・団体献金などの課題は積み残している。論戦をさらに前へ進めてほしい。
 政活費は、政党から政治家個人に支払われる政治資金だ。収支報告書に使途の記載義務が生じる政治団体とは違い、「渡し切り」の扱いになる。
 旧安倍派がパーティー券の販売ノルマ超過分を還流した際、政活費の名目だったとされ、議員らもその認識の下で報告書に書かなかったと釈明した。何に使ったか検証しようのないカネの存在が、国民の不信を募らせた。
 だが与党だけの賛成で通した6月の規正法改正の際、自民は、制度の温存を図った。改革の本気度が疑われたのは当然だ。
 今国会に提出した独自の改正法案でようやく政活費廃止を打ち出し、渡し切りの資金を禁じたものの、外交上の秘密などに関わる支出先は公開の例外とする新たな規定を盛り込んだ。これに野党は「第二のブラックボックス」をつくると批判。自民は規定新設を断念し、野党7党共同提出の全面廃止法案に合意した。
 ほかにも、政治資金を監査する第三者機関設置に向けた法案(国民民主、公明両党が共同提出)、外国人によるパーティー券購入禁止などを定めた法案(自民提出)の改革関連二つが衆院を通過した。法案ごとに野党が連携し与党が一致点を探って歩み寄る新たな政治の在り方を示せたのではないか。
 自民、立民は参院での関連法案の審議時間を確保するため、21日までだった今国会会期を3日間延長する。熟議を重ねてもらいたい。
 一方、立民などが提出した企業・団体献金の禁止法案に関しては自民が抵抗し、来年3月までに結論を先送りした。献金元の意向に沿って「政策がゆがめられる」との野党側の主張に、自民は、企業にも政治活動や表現の自由が認められていると反論する。
 共同通信の12月の世論調査では「禁止すべき」との回答が過半数に達した。それでも自民が献金を維持するというなら、年明けに始まる次期国会で国民が納得できる説得力ある答弁が首相らには求められる。

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