社説

[インフル最多]感染対策徹底しかない

2025年1月11日 付

 インフルエンザへの警戒が続いている。新型コロナウイルス禍で流行が抑えられ、免疫を持つ人が激減したことを患者数増加の理由に挙げる専門家もいる。
 厚生労働省は昨年11月8日、全国的な流行入りを発表した。12~3月が流行シーズンとされているが、今季は1カ月程度早い。昨年末、全国約5000の定点医療機関から報告があった患者数は1定点当たり64.39人と、1999年以降の最多を記録した。
 鹿児島県は96.40人。大分県(104.84人)に次いで全国2番目に多い数字だ。新学期が始まり、来週末には大学入学共通テストも控える。かからないための対策徹底を呼びかけたい。
 国はインフルエンザ流行に2段階の基準を設けている。1週間の定点当たり患者報告数10人以上で「注意報」、30人を超えると「警報」を発令する。
 鹿児島県内では先月12日に県内全域に出された今季初の注意報に続き、26日には警報にレベルが上がった。中旬から子どもを中心に急増している。
 冬休みが明け、学校に通い始めた子どもから、さらに広がる可能性もあるだろう。くしゃみやせき、つばによる飛沫(ひまつ)感染、ドアノブやスイッチなどを介する接触感染といったウイルスの経路を意識した予防が必要だ。
 ウイルスを物理的に除去するには、外出から帰った後の手洗いが欠かせない。体の抵抗力を高めるために十分な休養、バランスのとれた栄養摂取を心がけよう。
 こまめな換気も重要だ。厚労省ホームページの特設サイトは、一般家庭でも台所・洗面所の換気扇を常時運転させることを提案。暖房器具を使う冬場の窓開け換気は、短時間に全開にするより、少しだけ開けて常時換気を確保する方が室温の低下を抑えられることも紹介している。信頼できる情報を集め、日常生活に生かしてほしい。
 インフルエンザは38度以上の発熱のほか、頭痛、関節痛、筋肉痛、全身倦怠(けんたい)感が比較的急速に現れる。兆候が出たらまず安静にし、水分を補った上で、具合が悪ければ早めの医療機関受診を検討すべきだろう。
 特に乳幼児は合併症の一つであるインフルエンザ脳症にかかりやすい。意識障害や全身のけいれん、異常行動を伴い、命にも関わる。周囲は目を離さずにいたい。
 新型コロナに限らず、重症の季節性インフルエンザでも、長期的な健康障害のリスクが高まるという米国での研究結果が出ている。重症化が心配される高齢者や基礎疾患のある人は、主治医に相談の上で適切なワクチン接種を進めることが有効ではないか。
 一部では既に医療の逼迫(ひっぱく)や治療薬の供給不足が起きている。感染を広げないための一人一人の心がけが大切だ。

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