社説

[フジテレビ会見]配慮の上で真相解明を

2025年1月21日 付

 タレント中居正広氏の女性とのトラブルをめぐり、社員が関わっていたと報じられたフジテレビが、初めて記者会見を開いた。港浩一社長は「説明ができていなかったことをおわびします」と謝罪した。
 昨年末の週刊誌報道以降、中居さんの番組降板が相次ぎ、さまざまな臆測が広がっていた。メディアとして遅きに失した対応だ。
 フジは、弁護士による外部調査委員会を立ち上げ、社員関与の有無について検証する。プライバシーに関わる問題だが、十分な配慮を重ねた上で真相を解明し、疑念に応えてほしい。
 週刊誌は、2023年6月にフジ社員を交えた食事会の予定が、直前に中居さんと女性の2人だけになって性的トラブルが起き、中居さんが解決金9000万円を支払って示談したと報道。女性から相談を受けるなどした、同局幹部らの対応の問題も指摘した。
 会見は定例会見を前倒しする形で急拠(きゅうきょ)設定された。ラジオ・テレビ記者会は参加メディアを限定せず、動画撮影も求めていたが、フジは認めなかった。積極的に説明責任を果たそうという態度とは遠い。
 港社長の説明は、歯切れの悪さが目に付いた。トラブル直後に事案は把握し、報告は社長まで上がっていたという。女性の心身のケアやプライバシー保護を最優先に対応してきたと強調した。
 会食を設定したとされた社員については昨年末、会の設定を含め一切関与していないとするコメントを発表していた。会見でも否定の立場を崩さなかったが、トラブル把握後の会社の具体的な対応に関する質問には調査を理由に答えなかった。
 週刊誌報道以降、交流サイト(SNS)などで臆測は拡大した。フジは事実の究明と対処について一向に明らかにせず、真偽不明の情報が出回る事態を放置したともいえる。第2、第3のプライバシー侵害を招きかねない。
 女性社員にタレントを「接待」させる場を幹部が常態的に設けていた、との報道もあった。港社長は「そういうことはなかったと信じたい」と語ったが、明確に否定しなかった。女性の人権を侵害する実態があったのか、公正な調査を尽くすべきだ。
 トラブル以降も中居さんのレギュラー番組は継続した。昨年末の特番にも起用している。識者からは「被害者保護を盾に、事実を隠蔽(いんぺい)しようとした疑念」も指摘される。人気タレントを手放したくないテレビ局の思惑が優先したのではないか、不信が膨らむ。
 生保やトヨタ自動車など大手企業はフジテレビで放映しているCMを差し止めるなど影響は広がる一方だ。お茶の間で親しまれるキー局や芸能界の体質にも厳しい目線が注がれている。

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