今年は国連が定めた「国際協同組合年」である。持続可能な開発に協同組合が果たす役割を期待し、2023年12月の国連総会で決議された。12年に続き2度目となる。
前回は、08年のリーマンショックの中でも有効に機能した協同組合の相互扶助の枠組みに光が当たった。当時は新自由主義が席巻し、格差が広がり貧困が固定化した時代だった。あれから10年余り。なぜ、同じ国際年が定められたのか、意味を考えたい。
近代の協同組合は、生活苦にあえぐ労働者たちが互いに支え合うため、1844年に設立した英国の消費組合「ロッチデール先駆者協同組合」が起源とされる。日本では日清戦争後の不況下で零細企業の救済を目的に1900年、「産業組合法」が制定されて広がった。歴史的な背景から現在の農協、生協、信用金庫、信用組合は組合員同士の相互扶助を原則とする。
前回の国際年を定めた総会では、持続可能な開発、貧困の根絶、都市部と農村部のさまざまな経済分野に貢献できる組織として協同組合を成長させることなどを柱にした決議を採択。「協同組合の10年に向けた計画」が策定された。国連が定めた「持続可能な開発目標(SDGs)」でも、役割を果たすべき民間組織に位置付けられた。
一方、前回の国際年以降、世界では国連の活動とは裏腹に富裕層への富の集中が止まらない。2021年に経済学者たちが公表した国際研究によると、世界上位1%に入る富裕層が個人資産全体の約4割を所有し、下位50%の資産はわずか2%にすぎなかった。
政治の世界でも、自分の政策を推し進めるため長年築き上げてきた民主的な決まりごとをないがしろにする為政者は後を絶たない。最たるものはウクライナやガザをはじめ、各地で起こる戦争や内戦だ。2期目に返り咲いた米国のトランプ大統領は早速、気候変動対策の国際枠組み「パリ協定」の再離脱の大統領令に署名した。
国内では、東日本大震災、熊本地震、九州北部豪雨、西日本豪雨と大災害が頻発し、昨年の正月には能登半島地震も発生した。いずれも復興に大きな力となったのは、協同組合が原則にしてきた相互扶助であり、人々の絆だった点を再評価する必要がある。
今回、国内では日本協同組合連携機構が、各種のシンポジウムや大学での協同組合講座の拡大を働きかけていく計画だ。5月24日には、鹿児島県信連元常務理事の八幡正則さんが提案したフォーラムも静岡県掛川市で開かれる。協同組合の源流の一つとされ、八幡さんが長く研究する二宮尊徳の「報徳五常講」などの理念や歴史を振り返り、直面する課題に取り組む基盤づくりを目指すという。われわれも成果を共有し、未来につなげる契機としたい。