社説

[交通事故死者増]危機意識持って対策を

2025年2月2日 付

 鹿児島県内で2024年に起きた交通事故の死者は前年より13人多い53人だった。増加したのは7年ぶりで、しかも3割を超える大幅増である。県民一人一人が深刻に受け止め、再び減少方向へ軌道を戻さなければならない。
 全国の死者数は前年より15人少ない2663人で、うち鹿児島県は47都道府県中19番目に多かった。人口10万人当たりでは3.42人(全国2.14人)でワースト9位となり、前年の同28位から大きく後退した。
 死者数が100人を超えていた2000年代初めまでに比べれば少ないとの見方もあるだろう。しかし、これまでの減少傾向が途切れ、全国でも死者が多い地域となった事実は重い。こうした現状や死亡事故の特徴を正しく知ることが対策の出発点となる。
 県警のまとめでは、昨年の死亡事故は52件。類型別では車両単独が前年より2件多い19件、車両同士が同数の12件だったのに対し、人対車両は11件多い21件と倍増した。車は「走る凶器」になることを再確認し、歩行者保護の意識を高めたい。
 他の特徴としては、夜間の事故26件(前年比15件増)、運転中の前方不注意20件(同11件増)、横断歩道以外での横断歩行中13人(同10人増)が挙げられる。見通しが悪い夜間の運転や横断には大きな危険が潜んでいるとあらためて認識すべきだ。
 夜間の事故で亡くなった歩行者は前年より8人多い14人で、全員が反射材を着けていなかった。視認性を高める反射材の着用率アップも欠かせない。
 死者53人のうち65歳以上の高齢者は60%に当たる32人だった。前年より4人多く、22年連続で半数を超えた。運転者、歩行者双方の立場で、加齢による身体機能や認知機能の低下を踏まえた対策が一層重要になっている。
 高齢運転者は周囲の歩行者や車の認識遅れ、ブレーキとアクセルの踏み間違いなどが懸念される。高齢者講習や安全教室を通じて機能低下を自覚してもらうことが肝要だ。家族や知人が運転を見守り、場合によっては免許返納を検討する必要もある。
 とはいえ、高齢者の生活を支える地域交通は運転手不足などで衰退が著しい。不安を抱えつつ自らの運転や徒歩で外出せざるを得ない人もいよう。自治体は代替手段確保に努めてほしい。
 国内ではシートベルトの着用義務化をはじめ、あらゆる施策を総動員し死者数を大幅に減らしてきた。しかし、ここ4年は2600人台で下げ止まり、25年までに2000人以下にするとの政府目標達成は見通せないのが実情だ。
 高齢化の進展を踏まえれば、鹿児島県で死者数を抑制するのも容易ではない。警察や自治体任せにせず、家庭、職場、学校、地域で危機意識を共有することから始めよう。

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