社説

[25年度予算審議]責任ある財源論議必要

2025年2月7日 付

 2025年度予算案の国会審議で与野党の駆け引きが続いている。少数与党では野党の協力がなければ成立しない。石破政権にとって今通常国会最初の関門だ。
 衆院予算委員会では、立憲民主党など野党が予算案修正を視野に要求した初の「省庁別審査」を、きょうまで行う。無駄はないか。国民生活に、より有効な使い道は-。形骸化が叫ばれてきた予算審議の充実を望む。
 与野党それぞれの責任ある姿勢が試される。参院選をにらみ、有権者の歓心を買うための「ばらまき合戦」は控えるべきだ。安定財源に裏打ちされ、地に足のついた政策を訴えてほしい。
 25年度政府予算案は過去最大の115兆円5415億円に上る。柔軟に活用できる一般予備費に、異例の規模とされる1兆円を計上した。野党の歳出増額要求を見越し、受け入れる備えでは、との見方もある。編成時点から与野党の力学変化がうかがえる。
 政府、与党が目指す3月中の予算成立には3月2日までの衆院通過が不可欠だ。野党の求めに応じ予算案を修正する場合は1~2週間程度かかるとされ、逆算で2月中旬にも合意に達する必要がある。残された時間は少ない。
 昨年の臨時国会では24年度補正予算案に日本維新の会と国民民主党が賛成した。与党はこの枠組みを維持しようと、維新と教育無償化、国民とは「年収の壁」引き上げの協議を続ける。看板政策に一定程度譲歩することで、予算への賛成を取り付けたい思惑だ。
 一方、立憲民主党は予算案の「無駄」を精査し、修正を目指す。衆院予算委の基本的質疑では給食無償化や介護・保育従事者の待遇改善などを掲げ、それらの財源に政府基金の「積み過ぎ」分7兆円超を振り向けられると、独自試算を基に提案。「本気の歳出改革」で政権担当能力をアピールした。
 さらに5日には省庁別審査が始まった。府省庁ごとにどういう予算をつけ、何をしようとしているのかチェックする狙いだ。野党第1党の立民が野党の連携を深め、審議の主導権を握ろうとする新しい試みとして注目したい。
 ただ、旧民主党が09年の政権交代直後に鳴り物入りで導入した「事業仕分け」が演出ばかりが目立ち、期待外れに終わったことを多くの国民は忘れていない。国が借金に依存しながらこれだけ巨額の予算を組む必要性や、配分の優先順位について、費用対効果、財源含めて総合的に議論を深める場にしてもらいたい。よもや“ガス抜き”に使われるべきではない。
 石破茂首相は「各党の提案や考えを承りながら、より良い方法を目指す」と低姿勢を見せる。だが予算成立を急ぐあまり要求を丸のみすれば大幅な歳出増や税収減が生じかねない。「熟議」の試金石となる。

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