国会は2025年度予算案の3月中の成立に向けて与野党の駆け引きがヤマ場を迎えている。高校授業料無償化や「年収の壁」を巡り、与野党の政策協議に注目したい。
衆院の予算委員会で石破茂首相はきのう、患者負担が増える「高額療養費」制度の上限額引き上げ案の一部見直しや高校授業料の就学支援金制度を拡充するため、予算案を修正する意向を表明した。
自公政権では自民、公明両党が事前審査した予算案や法案がほぼ原案通り成立していた。「自民党1強」下で続いた政策決定のあり方は、衆院の与党過半数割れにより変わりつつある。国会が本来の役割を果たすよう、国民を向いた論議を求めたい。
自公政権では、政府は与党との調整を経て予算案や法案を閣議決定し、国会に提出。自公は所属議員に党議拘束をかけて賛成し、成立させるプロセスが固定化していた。
数の力を背景にした「国会軽視」にも映った。野党側は「審議時間の引き延ばし」で対抗するしかなかった。
昨年10月の衆院選で自民、公明両党は大敗し少数与党に転落、野党の協力なしには可決できなくなった。昨年12月には、24年度補正予算案が衆院で修正された。
予算案の修正は、国会側が行う場合と、政府が自ら申し出て国会の承認を得た上で内容を変更するケースがある。政府による提出後の修正は現憲法下で6例、国会による修正は5例ある。当初予算案が修正されれば、1996年の橋本内閣以来29年ぶりとなる。
過去最大の115兆円超に上る25年度の当初予算案は、今国会で初めて所管の予算案に関する省庁別審査が衆院で3日間実施された。立憲民主党など野党が予算案の修正を視野に、開催を要求して実現した。政府基金の「無駄」を追及、財源を踏まえたやり取りになったのは評価できる。
立民は14日、3兆8000億円規模の修正案を公表した。政府基金削減などで財源を捻出し、給食費無償化や高額療養費制度の負担引き上げの凍結を要求。日本維新の会が求める高校授業料無償化の拡充や、国民民主党が掲げる「年収103万円の壁」引き上げとガソリン税の暫定税率廃止も含む提案とした。野党第1党として、夏の参院選へ実績としたい考えだ。
維新と国民もそれぞれ与党と協議している。いずれも物価高に直面する国民の暮らしに直結する施策だ。高額療養費制度については、当初案通りなら患者の命やセーフティーネットとしてのあり方が揺らぐ問題だ。
選挙目当てのアピール合戦にとどまっていては見透かされよう。恒久的な財源の確保につながるか、将来を見据えた修正論議ができるかが焦点だ。