社説

[兵庫の維新県議]情報の扱い軽率過ぎる

2025年2月26日 付

 昨年11月の兵庫県知事選を巡る真偽不明情報拡散に、日本維新の会の県議3人が関与していたことが分かった。記者会見した3人は、政治団体「NHKから国民を守る党」の立花孝志氏への情報提供を事実上認めて謝罪した。
 3県議のうち2人は、県職員へのパワハラや贈答品受領など斎藤元彦知事の疑惑を調べる県議会調査特別委員会(百条委)の委員だった。会見では百条委尋問の音声データを立花氏に漏らしたことなどを認めた。情報の扱いが軽率過ぎる。公職者としての自覚と責任感を疑わざるを得ない。
 百条委尋問は知事選への影響を考慮して非公開で行われた。この非公開を決定した側にいながら部外者に漏えいした事実は、維新としても看過できないはずだ。
 県議3人は文書問題を巡る報道が偏向していたと感じたとして「発信力がある立花氏に渡すことで県民が知ることができると思った」などと釈明した。内情を知る県議だからこそ、新聞やテレビの報道が事実と違うと感じたり、意に沿わなかったりしてもおかしくはない。
 ならば、議会活動を通して正しい情報を発信すればよかった。そもそも県議は自ら発信力を持つ立場だ。「事実」はどこにあるか、所属政党の力で県民に伝えることもできる。権力者が隠蔽(いんぺい)している不祥事などを、公共の利益のため告発に踏み切る公益通報とは明らかに異なる。自分は正面に出ずに、注目されている他政党の力を利用したようにしかみえない。
 県議らの説明によると、提供したのは音声データのほか、斎藤氏を告発した元県民局長の真偽不明な私的情報をまとめた文書も含まれる。「うわさレベルの話でもオープンになることは必要だと思う」との認識を示した。
 斎藤氏支持を明言して知事選に立候補した立花氏は街頭演説や交流サイト(SNS)で、元県民局長のほか、百条委で斎藤氏を追及した竹内英明元県議らも批判の対象とした。全国の注目を集め、SNS上で誹謗(ひぼう)中傷が広がり、斎藤氏の再選に作用した可能性がある。今年1月に亡くなった竹内元県議は、SNS上の個人攻撃に悩まされていたという。
 「うわさレベル」の情報が選挙結果を左右し、個人を追い詰めたのではないか。引き続き検証が欠かせない。
 維新は昨年の衆院選で、立憲民主党や国民民主党が大きく議席を伸ばす中、公示前43議席を下回り38議席にとどまった。
 兵庫維新の会は、情報漏えいの3県議に対して除名や離党勧告の処分を検討している。党のガバナンスを疑われる事態である。夏の参院選に向けて党勢拡大を図るなら、公党として毅然(きぜん)と対応する必要がある。

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