社説

[ロ批判に米反対]和平への「総意」築いて

2025年2月27日 付

 ロシアのウクライナ侵攻開始から4年目に入った。ここへ来て、米国が露骨なロシア寄りの姿勢を見せている。
 国連安全保障理事会(15カ国)に、ロシア批判の表現を避けた「戦闘終結を求める決議」案を提出。米国、ロシア、中国を含む10カ国の賛成で採択された。一方、トランプ米政権の打つ手を警戒する英仏など欧州5カ国は棄権に回った。米ロと欧州の亀裂が深刻だ。
 悲惨な戦いを終わらせようと米国が和平仲介にかじを切るのは歓迎する。だが短絡的な成果を目指すあまり、ロシアに侵略の利得を認めるのではないかと懸念せざるを得ない。国際社会は和平への「総意」を築き直すべきだ。
 ロシアに肩入れする米国の姿勢は、安保理に先立って開かれた国連総会(193カ国)の決議にも反映された。
 ウクライナと欧州連合(EU)加盟国が提出した「ウクライナ領土の保全」と「戦闘停止」を求める決議案に、米国はロシアや北朝鮮と共に反対票を投じたのだ。日本を含む93カ国の賛成多数で採択はされたものの、波紋を広げたのは当然だろう。
 総会では、周到に準備された欧州案とは別に、米国が採決3日前に駆け込みで出してきたもう一つの決議案も採決にかけられた。事前協議で一本化できなかったのは異例のことだ。
 この米国案は「領土保全」に直接言及せず、「侵攻」「侵略」という言葉も用いず「ロシアとウクライナの紛争」にとどめた表現だったため、欧州が反発。「侵攻」などを書き加えた修正案にした上で、採択にこぎ着けた。総会決議に拘束力はないが、「国際社会の総意」は重い。
 米国が安保理に出した案も同じ内容で、英仏はやはり修正を求めた。しかしこちらはロシアの拒否権行使などに阻まれ、そのまま採択された。これまで米ロ対立により手詰まり状態だった安保理で、関連決議は初となる。欧州と対ロシアで協力してきたバイデン前米政権からの方針転換が、国連でも強く印象づけられた。
 トランプ米大統領はウクライナに対し、支援の見返りに希少な鉱物資源の供与を求めている。ウクライナ当局は資源に関する合意を結んだ上で、長期的な安全保障への米国関与について交渉を進めたい考えだ。
 ゼレンスキー大統領は近く訪米し、合意文書署名の見通しと報じられる。トランプ氏が「平和維持が必要」と強調するなら、ウクライナの安全を確実に保障する道筋をつける必要がある。
 同時に国際社会は、力による領土獲得は認めない強い意志を改めて確認し、ロシアに攻撃停止と撤退を迫らなければならない。プーチン氏の領土的野心は東欧諸国にも向いているとされる。膨大な人命の犠牲を早く止めなければならない。

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