社説

[兵庫第三者委]知事の責任は免れない

2025年3月22日 付

 斎藤元彦兵庫県知事を巡るパワハラ疑惑などの告発文書について、弁護士でつくる県の第三者委員会が調査報告書を公表した。文書は公益通報に該当し、通報者捜しを進め告発者の男性を懲戒処分したのは違法と断じた。
 県は通報者への不利益な扱いを禁じる公益通報制度をないがしろにしたばかりか、知事が公の場で告発者をおとしめる発言すらあった。
 斎藤氏は自らの正当性を主張し、真摯(しんし)な反省の色がうかがえない。知事としての資質を疑う声が消えないのは当然だろう。一連の問題に対する認識と責任を明確にする必要がある。
 第三者委は、内部告発した元県幹部の男性を停職3カ月とした処分について県の内部調査の中立性を疑問視する指摘が相次いだのを受け、斎藤氏が設置を表明した。県と利害関係のない弁護士6人で構成。県職員を一切関わらせないなど独立性を確保した。
 報告書は、告発された当事者である斎藤氏が懲戒処分を決める過程に関与したのは「極めて不当」と指摘した。告発内容の一部は公益通報者保護法の保護対象で、告発を理由とした懲戒処分は「明らかに違法」、処分は無効とした。通報制度に沿った妥当な判断だ。
 パワハラ疑惑については、調査対象の16件のうち机をたたくなどした叱責(しっせき)行為や、深夜にチャットで指示を出したことなど10件を事実と認定した。また、これとは別に記者会見で元幹部を「公務員失格」「うそ八百」と非難したこと自体が、パワハラに該当すると指摘したのは理解できる。
 斎藤氏は懲戒処分を巡って、元幹部の公用パソコンに保存されていた通報とは別の私的文書の内容を明かし、業務中に「倫理上極めて不適切」な文書を作成していたと非難した。通報者のプライバシーを持ち出した報復に当たる行為で見過ごせない。元幹部の処分の撤回など名誉回復を図るべきだ。
 県議会調査特別委員会(百条委)も今月上旬に県の対応は「違法の可能性がある」とする最終報告書をまとめた。だが斎藤氏は「適法の可能性もあるということだ」と開き直った。
 第三者委は斎藤氏が、百条委報告を正面から受け止める姿勢を示していないと言及。組織のトップは「自分とは違う見方もあり得るという姿勢を持つべきで、特に公式の場では人を傷つける発言などは慎むべきだ」と総括した。法の順守や人権の尊重を説くまっとうな指摘である。
 元幹部男性は昨年7月に死亡。百条委委員らへの中傷も横行し、被害を理由に議員辞職した元県議が今年1月に死亡した。また、斎藤氏が出直し知事選でPR会社に金銭を支払ったのは買収に当たるとする告発状も県警が受理している。一日も早い県政の混乱収拾が求められる。

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