社説

[内閣支持率急落]不透明な金との決別を

2025年3月25日 付

 石破内閣の支持率が急落し、20%台の「危険水域」に突入した。内閣支持率が30%を割り込むのは、岸田内閣末期の昨年8月以来となる。
 これまで「政治とカネ」にクリーンと評価されてきた石破茂首相自身に商品券配布問題が露見しただけに当然の結果と言える。与党内には夏の参院選に向けて危機感が広がり、首相退陣を求める声も上がっている。
 看板を代え、党勢回復を期待するなら安直だ。国民があきれているのは、庶民感覚とかけ離れ、改めようともしない政治の体質そのものだろう。石破首相が局面を打開するには不透明な金と決別する覚悟を示すほかない。
 共同通信社が22、23両日に実施した全国電話世論調査で、石破内閣支持率は27.6%だった。石破首相が訪米したトランプ米大統領との首脳会談が一定の成果があったと見られた2月調査の39.6%から急落。昨年10月の内閣発足後、最も低かった同月の衆院選直後の32.1%を下回った。
 衆院1期生への商品券配布について「問題だ」との回答が71.6%に上った。「政治とカネ」問題が自民政権下で根絶に向かうかどうかを尋ねると「向かわない」が78.5%に達した。首相は商品券配布を合法だとしつつ「世の中の感覚と乖離(かいり)した部分があった」と謝罪を繰り返しているが、政治不信は払拭されていないのは明白だ。
 金券配布は過去の岸田、安倍政権でもあった、との証言も出ている。首相は「慣行だったかどうかを知る立場にない」と答弁している。党総裁として、当事者意識を欠いている。
 昨年10月の首相就任直後に行われた所信表明演説で、石破首相は「国民の納得と共感を得られる政治を実践する」と訴えた。自民派閥の裏金事件で失われた信頼の回復に向けた決意を表明したと受け止められていた。
 政治改革論議のさなかの商品券配布問題は、石破首相の問題意識の希薄さを露呈、世論の失望は大きい。問題の幕引きを図ることなく、説明責任を果たすことが不可欠だ。
 自民党内では「このままでは参院選を戦えない」などと2025年度予算案の成立後を見据えた首相交代を求める声も出ている。石破首相は高校授業料無償化などで野党に譲歩を重ねた上、高額療養費制度の見直し迷走で指導力に疑問符が付いた。
 ただ「石破降ろし」の動きは、広がりを欠いている。求心力を回復できそうな後継候補は不在だ。世論にも選挙を見据えた「内輪の権力闘争」との冷めた見方があるからだろう。
 野党は首相に国会の政治倫理審査会出席や企業・団体献金禁止を迫り、圧力を強める構えだ。再びの「敵失」を選挙対策の材料とするだけでなく、実効性ある政治改革が求められる。

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