社説

[同性婚判決]「違憲」の流れより明確

2025年3月29日 付

 同性同士の結婚を認めない法律は違憲と、大阪高裁が判断した。同性カップルらが2019年に全国で起こした同種訴訟5件の高裁判決は、全て違憲でそろった。

 大阪高裁判決は「同性カップルが互いに自然な愛情を抱き、法的保護を受けながら共同生活を営むことは人格的生存に重要」と指摘した。人生の伴侶として法律的にも社会的にも認めてほしい、という思いに寄り添った判断といえる。

 同性婚を認める司法の流れはより明確になった。政府、国会は、人権の問題として重く受け止め、法制化の議論に着手する必要がある。

 訴訟は、現行の規定が「法の下の平等」を保障した憲法14条や「個人の尊厳と両性の本質的平等」を掲げた24条に違反するかが争点となった。

 判決は同性婚を認めていない民法、戸籍法の規定について、結婚による法的利益を得られない同性カップルの不利益は大きく「やむを得ないものとして正当化できない」と厳しく指摘した。その上で「個人の尊厳を損なう不合理なものであり、性的指向による差別」として、14条1項、24条2項に違反すると認定した。

 性的指向や性自認を理由に当たり前の権利を得られず、生きづらさを感じる人がいる。多様な性や家族のあり方に、現行の制度が見合っていないのは明らかだ。

 全国5地裁で6件起こされた同種訴訟は一審で憲法判断が分かれ、二審は札幌、東京、福岡、名古屋の4高裁が「違憲」判断。大阪訴訟は一審で唯一「合憲」とされたが、覆った。

 憲法14条1項、24条2項違反との認定は、5高裁共通の見解である。最高裁は今後、統一判断を示すとみられるが、国会は同性婚の法制化を強く促された格好だ。

 国側の動きは鈍い。既に3高裁で違憲判断が示されていた先月の参院本会議で、石破茂首相は当事者の負担に理解を示す一方、国民一人一人の家族観に密接に関わる問題だ、と言及。「訴訟の状況を注視していく必要がある」と述べるにとどめた。自民党の支持基盤で「伝統的な家族観」を掲げる一部保守層の反発を防ぐ政治的配慮を重視して、人権問題がなおざりになるなら看過できない。

 大阪高裁判決は、世論や関連団体の意見で同性婚への賛同が上回っている社会背景を踏まえ「同性婚の法制化を受け入れる社会環境が整い、国民意識も醸成されている」とも強調している。「国民感情が一様でない」と認めつつ「同性婚を法制化しない合理的な理由にはならない」とくぎを刺した。

 性的少数者に対する差別、偏見をなくすためにも、不足する法整備を進めていくことは不可欠だ。

日間ランキング >