鹿児島、宮崎両県にまたがる霧島連山の新燃岳の火山活動が高まった状態にあるとして、鹿児島地方気象台は噴火警戒レベルを3(入山規制)に引き上げた。警戒レベルが3になるのは2018年6月以来7年ぶりだ。鹿児島県は火口から半径4キロ以内を立ち入り規制した。
新燃岳では08年8月、17年ぶりとなる小規模噴火が発生。11年1月には約300年ぶりのマグマ水蒸気噴火が起きた。18年6月を最後に噴火は発生していなかった。
気象台は11年と同様に、爆発に伴う空振で窓ガラスが割れる恐れもあるとして警戒を呼びかけている。霧島連山は活火山だとあらためてリスクを認識し、注意を怠らぬようにしたい。
気象台によると、新燃岳付近の地下の膨張を示すと考えられる動きが昨年11月から続いた。火口直下を震源とする火山性地震の増加を受け、12月に警戒レベルを2(火口周辺規制)に引き上げていた。
大きな噴石が火口から4キロ、火砕流が2キロまで達する可能性があり、風下側では火山灰だけでなく小さな噴石が降る恐れがある。
11年1月26日に起きた噴火は、1週間で桜島山頂の噴火1万回に相当する約5000万トンのマグマや軽石を放出。9月ごろまで断続的に噴火した。
人命に関わる被害はなかったが、降灰や空振による被害が相次いだ。降灰掃除中の落下など鹿児島、宮崎両県で52人がけがをした。農産物や施設への被害は13億円を越えた。住民生活や観光はじめ地場産業に甚大な影響をもたらしたことが思い起こされる。
気象庁はレベル引き上げにあたり、単発的な爆発を繰り返す、現在の桜島のような規模を想定している。人工衛星による観測で大量にマグマが蓄積している動きは見られないため、11年のような長時間続く噴火には直ちに移行することはないという。
地元では慌てることなく避難態勢や安全対策を確認しておきたい。11年の噴火を教訓に、観測や防災の強化や登山客への対応が進んだ。周辺7市町(霧島市、曽於市、湧水町、都城市、小林市、えびの市、高原町)は19年、住民に防災マップを配布。えびの高原では観光、宿泊施設による自主防災組織が訓練を重ねる。火山と共生する土地としての心構えを築いてきた。
行楽シーズンを迎え、観光面への影響が長引くことが気がかりだ。関係者からは「登山以外にも楽しみ方はある」と冷静な声が聞かれるのは心強い。霧島の幅広い魅力をアピールし打撃を抑えたい。それには安全や交通について、正確でこまめな情報発信が前提となる。住民、観光客ともいつ噴火してもおかしくないことを念頭に、最新の情報入手を心がけたい。