社説

[続くコメ高騰]消費者不安解消急いで

2025年4月25日 付

 コメの価格高騰に歯止めがかからない。政府は備蓄米の放出を続けているが、流通が広がらずに緊急措置の効果は限定的となっている。需給、在庫量といった見立ての甘さから、小出しの対策が後手に回った結果だろう。

 農水省によると、7~13日に全国のスーパーで販売された5キロ当たりの平均価格は4217円。値上がりは15週連続だ。肥料、燃料など生産コストの上昇分が転嫁されているとはいえ、前年同時期の2倍を超える水準では消費者の理解は得られまい。策を尽くし、消費者の不安解消を急いでほしい。

 政府は流通の円滑化を目的に3月に計21万トンの備蓄米を放出し、ブレンド米の形で一部の店頭に並び始めている。だが、十分な量が行き渡らずに通常のコメ価格が下がらないため、3回目の追加入札を今週実施。さらに新米が出回り始める7月ごろまで毎月売り渡す方針という。

 転売防止のためのルールを緩和し、卸売業者間の販売も可能にした。全国で広く流通する時期について、江藤拓農相は早くても「4月末か5月」との見通しを示す。このまま高止まりが続けば、家計の負担は大きく、コメ離れにつながりかねない。

 一部の流通業者が在庫を抱え込んでいるのが最大の原因とみた農水省の分析は疑問視せざるを得ない。3月末に公表した調査では、生産者や集荷、卸売り、小売り、外食、消費者の各段階で在庫が分散して積み上がっていた。昨夏の「令和の米騒動」による不安から、例年以上にため込んだ防衛心理が実態ではないか。

 生産現場からは「量が足りない」との声も根強い。実際の生産量が国の推計より少ないとの見方である。調査の精度を向上させ、需給実態を的確に把握することが重要だ。原因をどうみるかで必要な対策も変わってくる。

 先ごろ閣議決定された食料・農業・農村基本計画ではコメ増産方針に転換した。輸出は5年後に現在の8倍近い約35万トンに拡大する目標を掲げた。米価の安定を重視し、生産量を抑制してきた農政の軌道修正である。

 海外向けの生産を増やし、主食のコメが不足した際に国内向けに振り向ける狙いもある。ただ担い手の減少や高齢化が止まらない。今必要なのは農家が所得を安定させ、安心して生産に取り組む基盤強化だろう。実質的な減反政策と指摘される現行の生産調整制度を柔軟に見直し、所得を直接支える政策も検討せざるを得まい。

 米国が発動した「相互関税」の見直しに向け、日米交渉の行方が注目される。米国側はコメを「障壁」としており、コメの輸入枠も焦点。同基本計画に反するような安易な譲歩をせず、食料安全保障の確立に向けて、中長期的な視点から毅然(きぜん)と対応するべきだ。

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