社説

[熱中症予防]生活の中で常に意識を

2025年5月4日 付

 気温が上がる日が増え、熱中症が心配な季節になってきた。体が暑さに慣れていない5月や、蒸し暑い梅雨の6月も油断できない。
 総務省消防庁などによると、県内で昨年5~9月に熱中症で緊急搬送されたのは2253人で、統計を取り始めた2008年以降最多。死亡5人、重症は45人に上った。全国では搬送9万7578人、死亡120人だった。
 この夏も猛暑が予想されている。エアコンで室内の温度を快適に保つ、こまめに水分を補給する、通気性のいい服を着ることなどが大切だ。生活の中で常に対策を意識し、命を守る行動を心がけたい。
 熱中症の危険度を知るには、気温や湿度などから算出する「暑さ指数」が目安となる。25以上が「警戒」、28以上「厳重警戒」、31以上だと運動を原則中止とする「危険」で、環境省や気象庁のサイトなどで発表する。
 さらにリスクが高まった際には「警戒アラート」、重大な健康被害が生じる災害級の暑さが予測されると「特別警戒アラート」が発せられ最大限の予防行動を促す。警戒アラートは全国を58地域に分け、地域内のいずれかの地点で暑さ指数が33以上に、特別アラートは都道府県内の全ての地点における翌日の指数が35以上になると見込まれた場合に発表される仕組みだ。
 ただ特別アラートは導入初年だった昨年、一度も発表されなかった。環境省は、地点間で指数の開きが大きい自治体があったためと分析する。専門家からは、標高の高い地点を発表の判断基準から外すよう求める声が上がる。
 鹿児島県も南北600キロに広がり離島が多く、霧島連山を抱えて観測の地理的条件は大きく違う。こうした状況で都道府県単位の基準は有効か。3月の環境省専門家会合では、出席者から発表区分の細分化が提言された。同省は数年間のデータを見て検討したいと慎重姿勢を示すが、国民の命に関わる情報だ。柔軟な見直しを求めたい。
 職場での対策も重要だ。厚生労働省は罰則付きで事業者に義務付ける改正省令を公布し、6月に施行させる。義務化の内容は、重篤化防止の体制整備、手順作成、労働者への周知が柱だ。
 同省の死亡事例分析では、初期症状の放置や発見の遅れ、異常時の対応の不備が目立つ。鹿児島労働局によると、24年は県内の職場で2人が死亡し36人が休業した。屋外の作業が多い建設業だけでなく、屋内作業の業種でも死傷者が出ている。企業には従業員の安全を守る徹底した対策が求められる。
 夏前に大切なのは適度な運動や入浴などで体を早めに暑さに適応させる「暑熱順化」だ。個人差はあるが、数日から2週間程度かかるという。暑さを感じにくい高齢者や子ども、障害者への目配りも忘れずにいたい。

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