新型コロナウイルス感染症が、重症化リスクの低下を理由に季節性インフルエンザなどと同じ「5類感染症」になって2年となった。
日常生活はコロナ禍前に戻り社会の関心は薄れつつあるが、流行は続いている。高齢者や基礎疾患のある人らは、コロナ自体は軽症でも合併症を引き起こして死亡するケースがある。
鹿児島県内の新型コロナによる死者数は、5類移行後も年650人を超えていることが国の統計で分かった。気を緩めてはならない。今も多くの人が脅威にさらされていることを、改めて認識したい。
国内の初確認から5年、人口動態統計に基づく全国の死者数の累計は昨年8月時点で13万人に上る。オミクロン株による感染が急拡大した2022年をピークに死者数は減っているが、インフルエンザより圧倒的に多い。定点医療機関の報告によると、流行は5類移行後も夏と冬に繰り返されている。
県内も収まっているとは言えない。コロナ死者は、累計2000人を超えるが、5類に移行した23年が683人、翌24年が11月までに667人と、この2年だけで全体の6割を占める。最多の22年の693人は下回るものの依然高止まりの現実は深刻だ。
専門家によると22年から流行が続くオミクロン株は感染力が高く、重症化しやすい高齢者が亡くなることが多い。体調に不安のある人は、重症化の予防になるワクチン接種の検討や、感染した際の早期治療が重要となる。
ただ、コロナ5類移行後段階的に支援は縮小され、24年4月から治療薬や入院費の補助がなくなり、ワクチンは高齢者らを対象とした原則有料の定期接種となった。感染が疑われても受診しないケースが増加しているとみられ、予防や治療への影響が気がかりだ。
この間、全国的にマイコプラズマ肺炎やインフルエンザ、百日ぜきなど、新型コロナ以外の感染症増加も顕著だ。コロナ禍での感染対策強化によって病原体にさらされる機会が減り免疫が下がったことや、5類移行後の対策への意識低下が一因となっている可能性がある。手洗いや咳が出る場合はマスクを着用する「せきエチケット」など、一人一人が基本的な感染対策を心がけてほしい。
コロナの重症化リスクの高い患者らを預かる医療機関や高齢者施設では家族らとの面会をどこまで認めたらよいか、模索が続いている。最期を迎える家族との触れ合いがままならないこともあり、本当に制限が必要なのか、疑問の声も聞かれる。
面会制限は施設側の業務軽減につながる面もあるだろう。「何のため、誰のため」の制限か問い直し続け、面会を望む患者側に対しては丁寧に説明していくことが求められる。