職場での男女の平等を目指す「男女雇用機会均等法」が1985年5月に成立して40年を迎えた。女性が働きやすい制度の整備は進んだかに見えるが依然、男女間の賃金格差が大きく、女性の管理職比率は低い。
男性を中心的な稼ぎ手とする、昭和型の雇用慣行がなお温存されていることが、背景といえる。「家事・子育ては妻」「男性は主要な業務、女性は補助」といった分業意識や思い込みを解消し、性別を問わず能力を生かせる社会づくりを目指したい。
男女雇用機会均等法は、あらゆる分野の女性差別撤廃を締約国に求める女子差別撤廃条約を日本が批准するために、国内法を整備する必要から成立した。86年に施行し、定年や解雇での男女差別を禁止。女性の採用が補助的な「一般職」から「総合職」と呼ばれる基幹業務に広がった。女性の働き方を変える一歩となったのは確かだ。
採用や昇進での機会均等については当初は努力義務にとどめたが、99年の改正均等法施行で差別禁止の対象とし、企業のセクハラ配慮義務も盛り込んだ。その後も改正を繰り返してきた。
この間、総務省調査によると、雇用者に占める女性の割合は、85年の35.9%から2023年は46.0%に増加。厚生労働省調査で一般労働者の男女間所定内給与の格差は、男性100とした場合、1986年の59.7から74.8(2023年)と縮まった。
男女間の賃金格差は減少傾向にあるとはいえ、他の先進諸国と比べると大きい。民間企業で課長級に就く女性割合は15.9%(24年)など管理職に占める女性割合が低いことや、非正規労働者に占める女性の割合が高いことが影響しているとみられる。
女性の労働力率は結婚・出産期に当たる20代後半から30代にかけて低下し、育児が落ち着く40代以降に再び上昇する傾向があった。グラフの形状から「M字」といわれたカーブは解消しつつある一方、正規雇用率が出産期以降は低下し続けている。出産を機に非正規に転じるケースが多いと考えられる。子育て中も安定して働ける環境づくりが欠かせない。
均等法成立40年に合わせて、共同通信社が主要企業の女性役員らに実施したアンケートによると、女性役員の比率が低い理由として「伝統的な性別役割分業の影響」や「ワークライフバランスの問題」を挙げる回答が目立った。性別に基づいて役割を硬直的に決めてしまい、責任を伴う業務から女性を遠ざけるような慣例はなくしたい。
女性役員増加に必要な取り組みは「経営層の意識改革」が最多だった。経営層の価値観や社内の風土を変えるには、企業ごとの女性役員比率の目標設定義務化といった一層の政府の働きかけも必要だろう。