社説

[戸籍の読み仮名]間違いはないか確認を

2025年6月29日 付

 戸籍の氏名に読み仮名を付ける改正戸籍法が施行された。全ての国民に対して、戸籍に新たに記載する読み仮名をはがきで順次通知する。間違っている場合は正しい読み仮名を届け出る必要があり、怠りなく確認したい。
 2023年に成立した改正法は、行政手続きのデジタル化の一環である。本人が特定しやすくなり、住民情報のデータ検索が容易になるといったメリットがあるという。
 一方、年金受給などで問題が生じる可能性が指摘されている。通知された読み仮名を修正する際は、年金を受け取る金融機関口座の名義と食い違いが生じないか注意したい。住民票や日本年金機構の登録情報と違い、口座名義は戸籍情報と連動しないため、本人の特定に手間取って支給が滞りかねないからだ。修正した読み仮名に合わせた名義変更が必要だ。同様の不一致は、パスポートのローマ字表記でも想定される。国と自治体は、混乱回避に向け丁寧な周知に努めなければならない。
 はがきは原則として戸籍単位で送られ、本籍地の市区町村から届く。筆頭者は氏名、それ以外の人は名前のみが記載されている。過去の出生届や住民票の情報を基にしたものだ。
 正しければ届けは不要。誤りがあれば、今年5月26日の法施行から1年以内に自治体の窓口やマイナンバーカード取得者向けのサイト「マイナポータル」で手続きする。施行後1年たっても届け出がない場合、通知された通りに戸籍に登録される。
 改正法は、読み仮名として認められる基準を「氏名に用いる文字の読み方として一般に認められているもの」と規定した。当てはまらない読み方は預金通帳やパスポートなどを示し、実際に使っている証明が求められる。
 特異な読みのいわゆる「キラキラネーム」に一定の制限を課した格好だ。だが、今回の手続きを担う自治体の担当者は、新生児らの出生届を審査する際に頭を悩ましそうである。
 法務省は2月、判断指針を公表したものの、認められないとして挙げた具体例は、太郎を「ジョージ」、高を「ひくし」、健を「けんさま」と読ませるケースなどわずかにすぎない。
 判断に迷った場合は法務局に相談し可否を決める仕組みだが、全てを照会するとは限らない。同じ名前と読み方であっても、自治体によって結論が異なるケースもあり得るだろう。世界でも屈指とされる日本の名前の多様性や、個人の「命名権」、「命名文化」を尊重するためにも不平等が生じないように万全の対策を講じるべきだ。
 懸念されるのは、法改正に乗じて自治体職員などをかたり、手数料を要求するような詐欺だ。不審に思った場合は、国や自治体が設ける問い合わせ窓口を積極的に活用したい。

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