社説

[〈2025参院選〉地方創生]長期的視点で処方箋を

2025年7月8日 付

 鹿児島県など多くの地方にとって人口減少と人口流出が大きな課題となっている。「地方創生」の旗が振られて10年が過ぎても是正されていない。

 交通機関の減便をはじめ、働き手不足による各種産業・サービスの衰退が県内各地で顕在化してきた。

 苦境に立つ地方をどう再生するかが、参院選の争点の一つになっている。各党には長期的な視点に立った処方箋を示してもらいたい。

 地方創生は2014年、第2次安倍政権が打ち出した。初代担当相として政策を主導したのが石破茂首相だ。東京圏への転入と転出を20年に均衡させる目標を設定。岸田政権が27年度に先延ばししたが、達成は不可能だろう。

 24年の人口移動報告によると、転入者数が転出者数を上回る「転入超過」(国内)は東京、埼玉、千葉、神奈川の東京圏4都県で13万5843人。約11万人だった14年より増えている。

 一方で40道府県は「転出超過」だった。鹿児島県は4410人。就職や進学で地方の若者が首都圏へ流出する構図は、新型コロナウイルス禍の一時期を除き、変わっていない。

 人口動態統計(概数)では全国の24年出生数が初めて70万人を割り込んだ。鹿児島県も8939人で過去最少を更新。第1次ベビーブーム期の1949年は6万4016人だったから、7分の1以下に減ったことになる。

 人口減に歯止めをかけ、東京圏一極集中を食い止めるにはどうすべきか。

 政府は今年6月、地方創生の今後10年間の指針となる基本構想を閣議決定した。人口が減ることを前提とした上で、若者や女性に選ばれる魅力ある地方をつくり、地方へ転出する若者の流れを倍にする目標を掲げた。

 制度設計をまとめるのはこれからで、地域活性化への効果は未知数だ。参院選での論戦が方向性を決めることになるかもしれない。

 本紙の4日付「私の公約」や6、7日付「鹿児島選挙区 候補者討論会」でも各候補の地方創生への考え方がうかがえる。特に税の再分配を巡っては「人の流れを政策的に誘導する」「東京などの一人勝ちを改める」「格差を広げた新自由主義の見直し」などをそれぞれ主張している。1次産業への直接支援や稼げる産業への転換、防災・減災の強化などの主張を含め、より具体的に有権者に思いを届けてほしい。

 関係人口を増やす「ふるさと住民登録制度」創設(自民党)、公立病院や赤字医療機関への支援強化(立憲民主党)など各党公約にも多岐にわたる地域活性化策が並ぶ。

 地域の課題に対し、より実現可能な施策を掲げるのはどの候補で、どの政党か。有権者として見極めたい。

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