自民党派閥の裏金事件が表面化してから1年半余り。「政治とカネ」が国政の最大焦点となり、抜本改革への機運が高まった。しかし、野党が「本丸」と位置づけた企業・団体献金の見直しは、またもや先送りされた。
昨年12月、今年3月、国会中と3回も期限を設定しながら、与野党の溝は埋まらなかった。最も責任の重い自民はもちろん、それを許した野党も、国民を裏切ったといえる。
有権者の怒りと不信にどれだけ気付いているのだろうか。政治への信頼はあらゆる政策の根底となるものだ。参院選では、各党の決意を問いたい。
企業・団体献金を巡り、立憲民主党や日本維新の会など野党5党派が「金権腐敗や癒着政治の温床」「見返りを期待しない企業・団体献金は存在しない」などとして禁止法案を提出した。
公明、国民民主両党は法案の形を取らずに規制強化案を提示。自民は「透明性を高めて存続」させる法案を提出した。主張は真っ向から対立し、接点を見いだせなかった。
共同通信社が先月実施した電話世論調査では、企業・団体献金の存廃について結論を出せなかった政治に対し5割弱が「不信感が強まった」と答えている。各党には少なくとも、企業・団体の政治資金パーティー券購入や、政党支部向けの献金を禁止するといった妥協案を見いだしてもらいたい。
自民は裏金事件の実態解明や再発防止にも真摯(しんし)に取り組んだとは言いがたい。派閥会計責任者と幹部の参考人質疑を実施したものの双方の証言が食い違ったまま。責任逃れに終始した「裏金議員」を参院選で公認したことは、反省していない証左と言える。
昨年10月の衆院選では裏金事件の逆風を受け、少数与党に転じている。時間が過ぎれば風化すると考えているのなら、大いなる勘違いである。物価高が直撃し日々の食料品購入にも頭を悩ませている多くの国民は、政治とカネの問題に厳しい目を向けている。
都議会でも自民会派の裏金事件が発覚した。関係議員は経緯の究明に後ろ向きで、自浄能力に欠けていたと言わざるを得ない。
参院選の前哨戦とされた先月の都議選は非公認の当選者らを合わせても過去最低の22議席。歴史的敗北を喫し、第1党から転落した。出口調査では、投票の際に裏金問題を「考慮した」と答えた人は6割、自民支持層でも5割に及んだ。
金権体質や利益誘導型の政治と決別することができるのか。約30年前の「平成の政治改革」以来、待たされ続けてきた課題である。どの党、どの候補に票を投じれば前に進むのか。じっくり見極めたい。