社説

[噴火続く新燃岳]暮らしと産業へ支援を

2025年7月16日 付

 鹿児島、宮崎両県にまたがる霧島連山・新燃岳で噴火が続いている。6月22日に7年ぶりに噴火し、7月3日には噴煙が5000メートルに達した。火山ガス(二酸化硫黄)放出量が多く、火山活動が活発化した状態だ。

 新燃岳では、2011年と18年にマグマが地表に噴出するマグマ噴火が発生した。専門家によると、当時のような本格的噴火に移行する可能性は高まっている。

 降灰や断水の被害が起きるなど、暮らしや産業への影響も広がっている。関係機関は支援、対策に全力を挙げてほしい。

 鹿児島地方気象台は噴火後の6月23日、新燃岳の噴火警戒レベルを3(入山規制)に引き上げた。火口から半径3キロに立ち入らないよう呼びかけている。

 新燃岳ではこれまで水蒸気噴火の後に、溶岩流や火砕流を伴うマグマ噴火があった。18年のケースは、5カ月後だったが、11年は急に移行しており、注視が必要だ。

 産業技術総合研究所の火山灰の分析では、11年と18年の噴火でできた溶岩の粒子の他、7月以降は新たに出てきたマグマに由来するとみられる粒子が徐々に増えている。

 特に11年のマグマ噴火は大きな噴石が飛散し、噴火による空気の振動でホテルや学校の窓ガラスが破損する被害が出た。今回も噴石の飛散や空振、火砕流へ警戒を怠ってはなるまい。

 連日の降灰が、住民を悩ませている。気象庁によると、6月下旬の噴火後、小林市や高原町、宮崎市など広範囲で降灰を確認。霧島市でも7月に入り道路の白線が見えなくなるほどの多量の降灰に見舞われた。

 子どもたちの登下校や外遊びへの影響が心配だ。除去に手の回らない人はいないかなど、目配りが欠かせない。
 鹿児島空港では降灰に伴い運航に支障が出続けている。発着の航空便が多数欠航した。

 降灰や雨の影響で、霧島市の一部地域では水道管と温泉用の配管が損傷した。宿泊施設や高齢者施設、一般家庭への支障は大きい。農業用水の取水口がふさがれ、コメなど農作物への影響も懸念される。一刻も早く復旧し、健康や農業、観光への打撃を抑えなくてはならない。

 霧島市では観光客の宿泊予約にキャンセルが出た。このため「克ハイ!プラン」などと銘打ち、宿泊代や飲食サービスに知恵を絞る動きが出ている。地域全体で逆境を乗り越えようとする取り組みは、関係者の参考や励みとなりそうだ。火山と共生する観光地として、こまめな情報発信が鍵だろう。

 火山活動の先行きは見通せない。いくつものシナリオを想定して、備えや避難行動を見直してほしい。

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