社説

[外交・安全保障]日本の主体性示して

2025年7月18日 付

 日本の外交・安全保障の基軸は日米同盟だ。だが「米国第一」を掲げるトランプ政権は関税に加え、防衛費増の圧力を強めて両国関係の足元を揺さぶる。

 ロシアのウクライナ侵攻や中東の紛争は終わりが見えない。日本周辺では中国や北朝鮮が軍事的行動を強めている。

 世界が混迷する中、日本はどんな立ち位置で国際社会に貢献するのか。平和国家としての主体性と行動が問われている。

 政府は2027年度までの5年間で防衛費に計約43兆円を投じ、国内総生産(GDP)比2%の水準まで増やす方針だ。それを3.5%まで増やせという要求案を米政権が提示した。

 2%目標の財源の一部となる所得税増税は開始時期さえ決まっていない。仮に3.5%に引き上げるなら9兆円前後の新たな財源が必要となり、増税論議は避けられない。

 米国が防衛費について「枠ありき」で求めるのは筋違いだ。防衛費強化が社会保障などの財源確保を狭めている事実もある。安全保障と負担の適正規模は日本が自ら判断すべきだ。

 6、7月には日本周辺の海域上空で、中国軍機による自衛隊機への異常接近が相次いだ。偶発的な衝突を誘発しかねない。ただ軍事的威圧に日本が抑止力一辺倒で対抗するのは危うい。粘り強い対話で一つ一つ懸案を取り除く努力が求められる。

 核・ミサイル開発を続け、ロシアとの軍事的結び付きを強める北朝鮮への対処には、韓国との協力が不可欠。歴史問題は避けて通れない課題だとしても、国交正常化から60年の節目を機に連携を深化させてほしい。

 民主主義や法の支配といった価値観を共有する国々との連携も重要性を増す。オーストラリア、フィリピンなどとの多国間の防衛協力は、米国に依存する安全保障戦略を補完し、重層的に地域安定に貢献する方策だ。

 参院選の公約で、自民党は防衛力の抜本強化を強調し、「世界の安定・秩序の旗手」を目指すと掲げた。立憲民主党は同様に日米同盟を重視するが、防衛費増税には慎重姿勢。国民民主党は「米国に過度に依存する防衛体制を見直す」との立場だ。

 こうした各党の議論は、物価高対策などに比べて低調で物足りない。平和の構築と国益確保の道筋について、しっかりとした選択肢を示し、民意を問うてもらいたい。

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