参院選はあす投票日を迎える。選挙区と比例代表を合わせた125議席に計522人が立候補している。「保守王国」と言われた鹿児島選挙区(改選数1)は激戦となっており、全国的にも注目されている。
選挙後の特別国会で首相を選ぶ衆院選と異なり、通常の参院選は政権の「中間評価」を示す場とされる。衆院で与党が少数の状況にある今回は、結果次第で国政の枠組みが変わる「政権選択選挙」の色合いも強い。
共同通信社が鹿児島県内で実施した電話調査で、今回の選挙に「関心がある」とした答えは95.5%と、これまでにない高水準だった。期日前投票数も参院選で過去最多だった前回を上回るペースとなっている。
投票率が一気に高まる可能性がある半面、「誰に投票すればいいか分からない」と迷っている人もいるかもしれない。
■100、80、10年の節目
日本の近代的な選挙は1890年の第1回衆院選で始まった。有権者は直接国税15円以上を納める25歳以上の男性に限られ、人口に占める割合はわずか1.1%だった。
普通選挙法の制定は100年前の1925年。女性は除外されたが、25歳以上の男性が財産の縛りなしに政治参加できるようになった。女性参政権が認められたのは80年前。20歳以上の男女が投票できるようになり、有権者の人口比は48.7%(46年衆院選)に拡大した。
さらに10年前、若い人の意見を取り入れるため「18歳以上」に引き下げられた。多くの節目が重なる今回は、少数与党政権で迎える戦後初めての参院選でもある。後から振り返ったとき、「歴史的な選挙」と位置づけられるのは間違いなさそうだ。
時代も大きな岐路に立つ。少子高齢化と人口減少という「縮む社会」が加速し、安全保障を含む国際情勢も目まぐるしく変化する。
年金・医療の在り方、外交・安保、外国人政策など今後の国のかたちに関わる論点は多い。政治のかじ取りをどこに委ねるかが最大のテーマとも言える。未来を担う若者にこそ「自分事」として考えてもらいたい。
残念ながら、投票できる年齢が引き下げられた後も、年齢が若いほど投票率が低い傾向は続いている。
参院選鹿児島選挙区の18歳投票率は前々回が28.32%で全世代平均を17.43ポイント、前回は30.77%で17.86ポイントそれぞれ下回った。若い世代の投票率が低いと、若者を重視した政策が後回しにされる可能性があることも知っておかねばならない。
■SNS頼みは危険
交流サイト(SNS)のショート動画で政治や選挙に関心を持った人もいるだろう。インターネットを使った選挙運動の解禁とSNSの普及により、有権者が得られる情報は飛躍的に増えた。
SNSは有効なツールであり、活用しない手はない。「推し活」のように好きな政党や候補を見つけて応援してもいい。ただ、それだけで投票先を決めないでほしい。
自分の考えに近い意見ばかりが表示される傾向がSNSにはある上、偽情報も多いからだ。欧米や台湾ではネットを利用した選挙介入も問題になった。発信元をしっかり確認しよう。
各政党のホームページで、それぞれの考え方を見比べることをお薦めする。
設問に答えていくと自分の意見に近い政党が分かる「ボートマッチ」サイトも参考になる。南日本新聞を含め各マスコミのホームページを確認してみよう。
手元に公示期間中の新聞があれば目を通してほしい。各党の公約などが紹介されている。鹿児島選挙区の候補者の考えは連載「論点を問う」(8〜13日付)や横顔(5日付)、討論会(6、7日付)で確認できる。
なるべく多くの情報に触れ、投票先を決めることが大事だ。
ぴったりはまる候補が出てこないかもしれない。「物価高対策でバラマキをしてほしくない人が入れる政党がない」といった嘆きも耳にする。「この候補の方がまし」といった消去法の選び方で構わない。現実はそっちが主流派かもしれない。有権者一人一人が意思表示することが大事だ。