社説

[高速道での逆走]防止対策の強化早急に

2025年7月20日 付

 高速道路での逆走事故が後を絶たない。逆走は死亡や大けがを負うような命に関わる重大事故に直結しやすい。国や高速道路各社は事故の原因を詳しく分析し、さらなる安全対策の強化を急いでもらいたい。

 栃木県の東北自動車道で4月、逆走した乗用車が対向の乗用車と正面衝突した。複数車両を巻き込み、3人死亡、多数の負傷者が出る惨事となった。

 全国の高速道で起きた逆走は年間200件程度で推移している。国土交通省によると、2011~23年の累計2654件のうち、20.0%が事故に至った。死亡率は10.2%で、高速道路事故全体の死亡率0.3%を大幅に上回る。これまで看板や路面表示などの追加対策は取られてはいるが、これだけ多発している以上、十分な効果が上がっているとは言えない。不十分であることは明白だろう。

 要因別では、高速道路の出口に誤って進入したり、インターチェンジ(IC)やジャンクションで分岐を間違えたりといった「道間違い」が半数を占める。逆走した認識がなく、認知症が疑われるケースもある。逆走事故を起こしたドライバーは65歳以上の割合が高く、社会の高齢化でさらに増加する恐れがある。

 国交省は6月、特に危険性が高いICやパーキングエリア(PA)など全国189カ所を「重点対策箇所」に選定。会社別では西日本が76カ所と最も多く、九州道の鹿児島ICや姶良IC、宮崎道の都城ICなどを含む。

 選定箇所の路面には埋め込み式の突起物を設置し、逆走すると通行を妨げる装置の導入などを想定している。コスト負担の課題はあろうが、安全を最優先して、できるだけ早く対策を充実させたい。

 自分が逆走しているのに気付いたら、どうするか。Uターンやバックは絶対にせず、直ちに路肩など安全な場所に停車してほしい。車から出て安全な場所に避難し、警察などに通報することが大切だ。

 三重県内で5月に起きた新名神道の逆走事故では、外国で取得した運転免許を日本で有効な免許証に切り替える「外免切り替え」制度を利用した外国人が運転していた。

 外国人材の受け入れ拡大や訪日客の増加などを背景に同制度を含む外国人の免許取得は増え、交通事故も増加傾向にある。従来から「手続きが簡単すぎる」という指摘が相次ぎ、国会で論議になっていた。警察庁は技能確認や知識を問う審査を厳格化する方針だ。

 交通ルールが違う国から来た外国人にとって、日本の左側通行は戸惑うこともあるだろう。外国人の運転を過度に危険視してはならないが、マナーを含めた安全教育や広報啓発には一層努めるべきだ。

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