オーストラリア海軍の新型艦導入計画を巡り、共同開発の最有力候補に日本が選ばれた。海上自衛隊の最新鋭護衛艦もがみ型がベースとなる。
海洋進出の動きを強める中国を念頭に、米国を中心に安全保障協力の強化を目指す日豪の思惑が一致した形だ。日本は官民一体で売り込みを図ってきた。国内防衛産業の振興を図る目的もあるのだろう。
憲法が掲げる「平和主義」の精神を踏まえ日本政府は長年、武器輸出に慎重だった。しかし第2次安倍政権が「防衛装備移転三原則」を決定して以降、なし崩し的に輸出の動きが拡大していることを危惧する。国際紛争を助長する不安は拭えない。
日本はかつて武器輸出三原則に基づき事実上の全面禁輸を基本方針としてきた。しかし2014年に安倍内閣が平和貢献や日本の安全保障に資するなどの条件を付け、従来の禁輸政策を撤廃。防衛装備移転三原則の運用指針で「救難、輸送、警戒、監視、掃海」の非戦闘5分野に限って輸出を認めた。
岸田内閣もこの流れを踏襲。22年に新たな国家安全保障戦略を策定し、装備品移転を推進する方針を明記した。23年には外国企業の許可を得て製造するライセンス生産品の輸出を解禁し、地対空誘導弾パトリオットの対米輸出を決めた。殺傷能力のある武器の輸出決定は初だった。
24年に英国、イタリアと共同開発する次期戦闘機の第三国輸出を解禁した。運用指針も改定し、共同開発した完成品の第三国輸出を認める項目を新たに設けた。
オーストラリアの新型艦導入計画もこの形に当てはまるようだ。オーストラリアと最終合意すれば、次期戦闘機に続く、大型の案件となる。
しかし、共同開発の定義は明確ではなく、解釈に余地がある。
24年の指針改定時、日本政府は、戦闘機輸出に際し、個別案件ごとに閣議決定することで手続きを厳格化したと説明していた。ただ審査は与党だけで完結し、国会関与の仕組みはない。
輸出規制は形骸化していないか。運用はあくまで抑制的であるべきだ。
政府は、フィリピン、インドネシア、ベトナムに海上自衛隊の中古護衛艦の輸出を検討している。「中古」も仕様変更することで、共同開発と位置付ける方針だ。際限ない輸出拡大につながる恐れがある。
輸出先は、国連憲章の目的に適合する使用を義務付けた協定を日本と結んだ国に限っている。相手国の「適正な管理」も挙げる。だが、一度輸出した武器の用途をチェックしきれるのかも不透明だ。
先の大戦の反省に基づく「専守防衛の理念」が問われる。戦後80年の節目に、国会で慎重な議論を求めたい。