トランプ米大統領がウクライナのゼレンスキー大統領と対面で会談し、ロシアによる再侵攻を防ぐための「安全の保証」に関与すると初めて明言した。ロシアのプーチン大統領とは電話協議し、ゼレンスキー、プーチン両氏の会談に向けた調整を始めた。2週間以内の開催を目指すという。
難航も予想されるが、実現すればロシアがウクライナに侵攻した2022年2月以降、初の首脳会談である。戦争終結に向けた一歩としなければならない。
今回の会談では欧州各国の首脳もゼレンスキー氏に同席した。当事国や米国任せでなく、日本を含めた国際社会が一丸となり対話と早期停戦に向けた環境固めを加速させてほしい。
トランプ氏は交流サイト(SNS)で、まずゼレンスキー氏とプーチン氏が会談し、その後に自身も含めた3者会談を実施するとした。
ウクライナにとって安全の保証の確保は死活問題だ。ソ連崩壊後、自国に残った核兵器を放棄する見返りに米英ロが主権と領土の尊重を確約した1994年の「ブタペスト覚書」をはじめ、ロシアは約束を再三破り、クリミア半島併合や全土侵攻に踏み切った。
トランプ氏は安全の保証を巡り、米軍のウクライナ派遣は否定し、派兵する方針の欧州各国を米軍が防空面で支援する考えを示した。
北大西洋条約機構(NATO)のルッテ事務総長によると、安全の保証には日本を含む30カ国が関わる方向。NATOの集団的自衛権に類似した形態の保証を議論しているとしたが、詳細は明らかにしていない。
石破茂首相は「法制面、能力面も含めよく検討しながら、しかるべき役割を果たしていく」と、日本の関与を検討する考えを示した。地雷除去やインフラ整備、資金提供などを通じたウクライナの復興支援に関わることが現実的な選択肢とみられる。
気がかりなのは、トランプ氏の立ち位置が揺らいでいる点だ。
アラスカで開かれた15日の米ロ首脳会談ではロシア寄りが明らかだった。ロシアへの追加経済制裁や停戦要求を棚上げした上、ウクライナに対しクリミア半島の返還やNATO加盟を諦めるべきだと公言した。
今回の会談直後も、安全の保証を巡る米国の立場を「調整役」とするなど、早くも後退の兆候を見せている。
仲介役の米国が再びロシア寄りにつけば、プーチン氏の思うつぼだ。ウクライナは今も攻撃にさらされている。国際社会の連帯が問われる。
和平の実現には領土の確定が必要になり、曲折するのは間違いない。国際法を無視して侵略戦争を起こしたロシアへの領土割譲を認めないための圧力も強めるべきだ。